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第六十一章 のんびり生活のはずが

ウイッチの人員不足

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 エラムに転移してから約百三十年……
 ラグナロク戦争が終結して、テラ歴で五ヶ月後。
 ヴィーナスさんは、先頃惑星エラムの旧インプットステーションを改装した、エラムウイッチリゾートで、のんびりと決裁などをしていました。

 ヴィーナスさんはこの後、惑星エラムで新年を迎えることになっています。

 ボロボロになってまで、戦い抜いたヴィーナスさん。
 さすがに一年の臨時グランドツァーがいただけたようで、今回だけは視察や検分もなし。

 ただ夜伽はありますけど、グランドツァーということでご出張タイムとなります。
 ホーム巡回と年に四回の『サバト』ーー一斉夜伽ーーは免除されません。

 その上、ラグナロク戦争の戦勝記念として、ミリタリー以外でも、たくさんの方々が格子へ、格子の方々は側女待遇格子、つまり寵妃に昇格し、この臨時グランドツァーの前に、かなりの肉体労働を強いられた、ヴィーナスさんでした。

 ハウスキーパー事務局は、今回のラグナロク小改定?以前の方々は全員寵妃に引き上げて、ウイッチの人員不足を解消したいようです。
 今まで格子さんは、執政官にしなかったのですが、これから寵妃さんは、どしどしと任命したいようです。

 なんせ人員不足で、惑星世界の加盟申請を受理しても、人工知能が執政官代理を行っている状態です。
 これは本来軍政で行われる状態、加盟世界と寄り添い、現地政府の要望を聞き、直轄惑星への手助けをするためには、やはり生体の執政官が要望されているのです。

 さらに寵妃候補は、経験値をつむために、管理官になってもらいたいとの事です。
 これはネットワーク審議会からの強い要望で、ハウスキーパー事務局がついに折れた結果です。

 おまけに事務局は、各地の婦人戦闘団の散茶端女の中から、希望者を募り、未開発惑星の軍事監視官として任官させるという、未開発世界軍事監視官制度をひねり出したのです。

 そもそも婦人戦闘団員は、宣誓戦女ですから一級市民の扱い、まして軍人さんなので、貨物鉄道に乗車させても矛盾はありません。

 軍事監視官の必要性を認めてはいましたが、誰でもとはいきません。
 人手不足があまりにひどく、いつも沙汰止みだったのですが、ついに実現したのです。

 散茶端女ならヴィーナスさんのお手つき、ミリタリーとしても文句はいえません。
 よく考えられていますが、年に一回、ミリタリーオフィス主催の『ファミリアーサバト』なる物が催されることになりました。

 先ごろ、惑星ロマーニャで実施された特例のミニサバト、これを事務局が目をつけ、制度化したようです。
 散茶端女を増やすためのものだそうです。

 ただ散茶端女をウイッチに昇格させる場合は、ハウスキーパー事務局の承認となるようです。

 ソル星系の、惑星ヴィーナスにある軍事大学校に、軍事監視官専門の育成部門が新設され、一年間の事前教育を行うらしいのです。
 この未開発世界軍事監視官は、三十七歳には絶対にならないという特典があります。

 おいおい資格を散茶端女から、功労章などの女性兵士を名誉散茶端女とし、未開発世界軍事監視官に任官させる案もありますが、これはかなり先の話となるでしょうね。

 なにはともあれ、ヌミディア女騎兵隊とサルマタイ婦人騎兵隊の散茶端女さんは、全員希望していただけましたので、いま未開発世界軍事監視官教育を受けていただいています。

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