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第六十四章 神(かみ)さり
幽子定数群体
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「ありがとうございます、失礼ですが、なぜかかってこられなかったのですか?」
「これは『うけい』ではあるが、形を変えた審神者(さにわ)ーー本来、神託をうけ神意を伝える者のこと、広い意味ではその真偽を見極める者のこと、ウィキペディアより抜粋ーーでもある」
「我は汝を見極めるために戦っている、存在をかけているが、それゆえ清庭(さやにわ)ーー神託を受けるための清められた場所、ウィキペディアより抜粋ーーを汚すわけにはいかぬ」
……
「お言葉に恥じ入るばかりです、つまらん策をめぐらしていました、今しばらくお待ちください」
私は電撃杖をしまいました。
そして髪を束ね、衣装をたすきかけとし、靴も脱ぎました。
「得物を持て」
「いえ、これは神が見ておられる戦い、非力ながら、やはりこの身で戦うべきと思いました」
「全身全霊をこめて戦いますので、お相手を願います」
威力は、相手のほうが圧倒的でしょう。
女の身体で戦うにはスピードが命、幸い私はタフでもありますから、スピードが落ちることはありません。
スピードに体重を乗せての蹴りに、かけてみましょう。
私は後ろにジャンプしました、そして全力で相手に向かって走ったのです。
加速をつけて、横蹴りを顔めがけて放ちますと、天之常立神は、
「笑止」
といって、両手で顔を防御します。
渾身の一撃でも、二三歩後退させただけですが、その瞬間に、私は残りの足で後頭部めがけて回し蹴り、さすがに決まったようで、グラッとし膝をついた天之常立神でした。
「それまで!」
宇摩志阿斯訶備比古遅神が、声をかけました。
「通るがよい、汝の勝ちだ」
そして二人の神は掻き消えたのです。
……幽子だったのか……
ヘスなどとは違う幽子の結合体、群体のように緩く回路を構成して、一個の擬似人格となっている……多分ですが定数群体ではないか……母群体は誰なのか……誰から分裂したものか……
道は拝殿を通り抜け、本殿に続いています。
良く見れば、道はさらに曲がりくねって、西から本殿に続いています。
私はそのまま無言で、本来の本殿正面までたどり着きました。
大国主命は、こちらに向いておられるからです。
ここで二拝四拍手一拝をします、そして祝詞を唱えたのです。
極(きわ)めて汚(きたなき)も滞無(たまりなけ)れば穢(きたなき)とはあらじ
内外(うちと)の玉垣清淨(たまがききよくきよし)と申(もう)す
すると、ないはずの扉が現れます。
そしてヴィーナスさんは、本殿内に足を踏み入れたのです。
……懐かしい感覚があるが、危険も混じっている……
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