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第七十章 巡礼の道

暗殺はお好き?

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「ティアマト様!」
「ペルペトゥアさん、そんなに気にしないの、それよりお風呂にでも入りましよう」
 
 ドアをノックする音がします。

「もう、早いのね、お風呂も入れないのわ」
 ライラさんが、「私が出ます」といい、

「どなたですか?」
「ルームサービスの者です」

 無造作にドアを開けますと、ライラさん、当身を食らったようです。

 ペルペトゥアさん、とっさに振武刀を引き抜こうとしましたが、一撃を受けました。
 幸いに腹部への突き、戦闘下着の威力で、命には別状もありません。

 美子さん、突きをその相手に叩き込んでいます。
 側面からの脇腹への突きですから、簡単に倒れてしまいます。
 なんせこの世界は女しかいません、美子さんの突きなどくらえば致命傷でしょう。
 入り口からはさらに四五人、なだれ込んできました。

「死にたいのなら、かかってきなさい」
 どうも余裕の美子さんです。

 蹴りなども繰り出し、あっという間にのしてしまいました。
「殺し屋さんにしては軟弱ね」

「ティアマト様が強すぎるのですよ」
 ペルペトゥアさんが、感心したかのように言葉を発しています。

「ライラさんは大丈夫かしら?」
 活を入れている美子さんです。

 なんとか意識を取り戻したライラさんに、安心したようで、
「ペルペトゥアさんも大丈夫?」
 なんて聞いています。

「まぁついででも、気にかけていただき、ありがたいことです」
「あら、妬いているの、可愛いわね、ペルペトゥアさん」
「いえ……」

「それより、どうしましょうかね、ペルペトゥアさん、少し締め上げてくださらない」

 ペルペトゥアさん、うめいている暗殺者を、かなり殴ったりして……
「やはり宿屋の支配人の差し金のようです」

「隣の部屋にいるのでしょうね」
「そのように申しています」
「では隣の部屋に行きましょう、きっと喜んで巡礼証などくれるでしょうから」

 美子さん、問題の隣の部屋のドアを、いきなり開けました。
「支配人さんですか、このたびは、丁寧なルームサービスをありがとうございます」

「あるじ様、私が丁寧に交渉いたします」
 いつのまにか、ライラさんがついてきていました。

「お優しい支配人様、私どものあるじ様に巡礼証をいただけると信じています」
「私たちのあるじ様は、だれよりも信仰深き者であられます」

「支配人様に置かれましては、そのあたりを考慮していただけると信じています」

「しかし……いや、そうおっしゃるなら……どうぞ、これが巡礼証です」

「料金は……」
「奴隷五人分でいいでしょう?特別室に少しばかり怪我をしていますが、屈強な奴隷が五人おります」
「それでいかがでしょうか、なんせ私どもは信仰深き者、あまり手許金を持ち合わせておりませんので」

「……承知……した……そのかわり、別の宿に移ってくれ、三軒隣の巡礼宿なら、まだ部屋は開いている……」

 こうして私たちは巡礼証を手に入れ、宿を放り出されたわけです。

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