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第四十章 192年11月のリスト

粛清リスト

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 そしてラエトゥスとペルティナクスは、本当にこっそりと会談を持ちましたた。

「ペルティナクス、俺は殺されたくない」
「俺もだ、コンモドゥスは狂っている、ヘラクレスの棍棒を持ってこいと命じられた」

「何とか言いぬけたが、捜索中といって、逃げられるのも今年が限度、何もかも捨てて、逃げる事も頭をよぎったが釈然とせん」

「俺と組むか?一か八かの策がある」
「お前と?昔なら信じられんが、今なら瀬戸際のお前と俺、策によっては組んでもよい」
 
「コンモドゥスを殺す……」
「出来るのか?カッシウスを素手でたたきつぶせる男だぞ」
「毒殺……」

「なるほど、それなら……」
「しかしだれが飲ますのか?」

「愛妾マルキア」
「あの女か……しかし……なんといってもコンモドゥスの寵妃、理由がないではないか?」
「あるさ、理由は作るのさ」

「作る?」

「俺もそこで悩んだ、しかし閃いたのさ、リストを作り、それをマルキアに見せる」
「意味が分からん」

「こういう事さ」
 ラエトゥスは説明を始めました、策の内容を。
 
「コンモドゥスは狂っている、これは誰もが知っている」
「マルキアは、いつコンモドゥスに棄てられるか、不安に思っている」

「なんせコンモドゥスは、近頃少年に凝っている、ウェヌス教団に、あきた女奴隷を投げやったからからな、クリスピナ・ミノルとかいったな、あの女奴隷」
「つづけてくれ」

「来年には、コンモドゥスは大改革を計画しているのを知っているだろう?」
「元老院で演説した」
「大改革に大粛清があってもおかしくはない」
「たしかに、誰もがいわれれば納得する」

「そこでだ、コンモドゥスが、その為の粛清リストを作っていた」
「その中にこのラエトゥスとペルティナクス、そして有力元老院議員の名が並んでいる」
「そしてその中にマルキアの名もあった……」

「そのリストをマルキアが見る……そのぐらいの細工なら出来るわけか……」
「マルキアは、まずこのラエトゥスに相談するはず、間違ってもペルティナクス、お前だろう」
「他の誰にも相談などしない、なんといっても身近に軍事力を持っている者など、他にはいないのだからな」

「で、上手くいったらどうするのか?」
「首都長官が皇帝になってもいい、ただし近衛隊は優遇してくれよ」
「金か?」

「近衛隊はな、俺はそうだな……ほとぼりが冷めたら副帝にでもしてくれ」
「副帝になってどうするのか?」

「なんの責任もなく遊び呆けるのさ、そのような副帝なら、皇帝陛下としては危険を感じないだろう?」
「分かった、取引といこう」

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