惑星エラム 幻のカタカムナ 第一部 パクス・ブリタニカ編 【ノーマル版】

第十七章 新たなパラレルワールド

オルメカ第五方面軍

　シング・ア・ソング・シックスペンス……

　私は歌っていました。
　エステラさんとナスターシャさんがいます。

　シング・ア・ソング・シックスペンス……

　歌いながら、これはどうしたことかと、考えています……
　あの時のまま、時間が進んでいない……
　この記憶は夢なのか……

　シング・ア・ソング・シックスペンス……

　いや違う、確かに体験した時間であるはず……
　この死にそうな疲労感がその証拠……

　では、私は刹那(せつな)の間に、世界を救おうと苦闘していたのか……

　八芒星の手鏡をチラッと見ると、そこにはカタカムナ文字が見えました……

　デーヴァの宇宙、惑星ブリタニカ……そう書いてあります。

　歌をやめました、そしてつぶやいたのです。
「いかなければ……」
　しかし……身体が思うように動きません。
　疲れ果てているのです、歩くのがやっとなのです。 

「ミコさま、やはりお体がすぐれないのでは、大丈夫ですか？」
　エステラさんは、私が食欲がないのを心配してくれているのでしょうね。
「大丈夫、少ししんどいだけですから、大丈夫……」

　私はまだブラックドレスのままでしたが、すぐにマレーネさんを呼び出しました。

「今すぐ、宇宙を渡れる宇宙船はありますか！」
「オルメカ第五方面軍の船が、シウテクトリの護衛についてきています、これならすぐに出航できますが」

「シウテクトリさんに断りを入れて、すぐに出航準備をさせてください、今からすぐに行きますので」
　マレーネさんは何も云いませんでした。

　私の言葉の響きから、大事を悟ったのでしょう。
　第五方面軍といえば、コアトのところですね……

　その第五方面軍司令部は、大騒動になりました。

　シウテクトリさんが直々にやってきて、
「ルシファー様がご乗船になる、私もお供する、すぐに出航用意をせよ」
「ルシファー様は、先ごろお体を壊されている、それを押してのご乗船である」
「ハウスキーパーのサリー様もご乗船なされる、とにかく急な話であるが、万全の準備を整えよ」

　第五方面軍の副官ウィツィ、コヨル、メツトリ、チワの四人は有能です。

　すぐに旗下の稼働可能の、戦艦スキーズブラズニル改級を集め、ニライカナイの惑星世界管理局より、物資の補給を最優先で受けさせています。

　ニライカナイに遊びに出ていた艦隊乗組員にも、非常呼集がかかりました。

「なんだ、戦争か！」
「相手なんかどこにいるのだ？」

　オルメカの美女兵士は、そんなことを云いながら走ってきます。

　コアトの旗艦、オルメカⅤは戦闘指揮艦ヘルメス級の一艦、最後の審判戦争の時より大改装され、通信能力は、いまやすべての宇宙を通信範囲にすることができます。

　そしてヘルメス級は、大改装の結果、ダークフローに出ることができるようになっています。
　旗下の艦隊を指揮するに十分でしょう。

　しかしこのあと、ミリタリーの方面軍クラスの旗艦としては、順次建造されるスペースシティ級にかえていく予定だそうです。

　オルメカにはシウテクトリさん直属として二隻、ヨミのイザナミさん直属として一隻、バアル・ゼブルさんのところには二隻、姉の旗艦としてアーチダッチェス用に一隻、これはかなり姉の我儘で、一目見ればわかるようになっています、そして現在ユニバース用に一隻建造中です。
　なんせ根拠地用の移動要塞ですからね、私のは無いのですよ。

　もっともヘルメス級は、まだまだ艦隊の一員として、この後さらに改装される予定です。
　行動範囲の広い通信艦は、使い勝手がいいのですよ。

　とにかく瞬時に宇宙を渡るためには、ダークフローにでる必要があります。

　現在、オルメカに配属されている戦艦スキーズブラズニル改級は二十一隻、百年の間に、艦隊も復活しているのです。

　第五方面軍には戦艦スキーズブラズニル改級が三隻配備されています。
　旗艦であるオルメカⅤを含め、この四隻が私に付き従ってくれるようです。