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第二章 ニンリルの物語 憧れの学生生活

寵妃はおちおちお茶も飲めない

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 ガリレオ女子航空宇宙パイロットスクールの女子寮は、アンドロメダ寮といいます。
 二ンリルたち、一期生が入学し、二か月ほどたったころ、夏といってもガリレオ衛星ステーションの中、暑いわけでもありません。

 ガリレオ女子航空宇宙パイロットスクールには、夏休みなどはなく、唯一の楽しみでもある日曜日、仲良くなった友達に誘われ、朝からステーション内にある映画館へ。

 なんでも古い映画で、『風と共に去りぬ』とか、ニンリルさん、生まれて初めて映画なんて見たのです。

 映画を見終わり、皆で喫茶店へ、制服姿の若い女性たちのおしゃべりはヒートアップ。

 映像は素晴らしく、見入っていたニンリルさんですが、ストーリーは批判的です。
「馬鹿女の自伝をみても、何の感動もない」
 と、云ったそうです。

 友達が、
「でも、クラークゲーブルに愛されるのよ、あこがれるわ♪」
「私、任官しているから、男にあこがれるっていう感覚がもてないの、憧れる相手はミコ様しかいないの」

「えっ、ミコ様?ナーキッドオーナーの?ニンリル、任官していたの!」
「ねぇ、ニンリルは素晴らしく美しいけど、清女なの?」
「……」

「でもニンリル、リングをつけていないわね、不可視にしているの?」
 この頃には、リングは不可視化できることは知れ渡っていますが、まずリングの不可視化などする者は、滅多にいないのも周知の事実。
 友達はニンリルさんが任官していると、このとき初めて知ったのです。

「じつは……私、側女なの……」
 チョーカーが、ニンリルさんの首に現れます。

 さすがの友達も、一瞬沈黙しましたが、
「ニンリル、浮世離れしたところがあるから、忠告するけど、ここでそれを見せるのは不味いかもしれないわ、分かったから、不可視にしたほうがいいわ」
 でも、遅かったのです。

 ネットワークでの、チョーカーの威力は絶大です。
 寵妃の証ですから、何から何まで、普通の扱いはされなくなってしまいます。

 映画館などに入れば即座に貴賓室、一般の観客に混じっての鑑賞なんて、望み薄です。
 案の定、喫茶店の店員さんやお客さんに、記念撮影なんて、頼まれてしまいました。

 オーナーは絶対に写真撮影は不可ですが、それ以外の任官者は、別段とやかくはいわれません。
 任官者の肖像を営利利用すると、必ず大変なことになります。
 肖像に魔法がかかることは知られていますが、悪用しなければ、なんら害はおこりません。

「ねっ、お茶も飲めなくなったでしょう」
「ごめんね、迷惑かけたわ……」
「いいのよ、でも本当に驚いたわ、友達が寵妃さんだったなんて……」

「そういえば誰か云っていたわね、ニンリルって、寵妃じゃないかって」
「ものすごく綺麗で、何でも出来るのは異常って、寵妃じゃないと、説明が付かないってね」

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