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第六章 キュネブルガの物語 トライアングルの内乱

ノーサンブリア王国公爵令嬢エアンフレド

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 ノーサンブリア王国公爵令嬢エアンフレド……
 王国一の美姫、リンデスファーン公爵家の末の娘である。
 その美貌はソンガイ帝国にも知られている。

 リンデスファーン公爵家とは、最初のノーサンブリア王でもあるエアンフリッドの直系で、エアンフリッドは兄弟であるオスワルドに暗殺され王位を簒奪され、そのオスワルドの子孫がバーニシア王朝の始祖である。

 以来、細々と惑星ノーサンブリアのリンデスファーン島を領地として、バーニシア王家に迫害されながらも生き残ってきたのである。

 先ごろリンデスファーン島付近の海底で巨大地震が発生、リンデスファーン公爵家の城館は崩れ落ち、その上に巨大な津波が島を襲ったのです。

 被害は甚大、リンデスファーン公夫妻、エアンフレドの姉夫妻、そして弟も亡くなったのです。

 被災からの復興のために、一族はエアンフレドの叔父をリンデスファーン公爵と仰ぎ、王に援助を求めた。
 ノーサンブリア王は、二番目の王子とエアンフレドの婚姻を条件に援助を約束した……
 しかしそのときには戦火は迫ってきた、惑星デイラが陥落したのである。
 
 ノーサンブリア王は全戦力を率いて出征、王子たちも同行……敗戦の中、王も二人の王子も戦死してしまった。

 いま王国は滅亡し、惑星ノーサンブリアは宰相の指導の下、何とかソンガイ帝国と停戦交渉の最中にある。
 実質的な敗戦ではあるが、よりよき条件での講和に心血を注いでいる。

 そしてソンガイ帝国から、停戦交渉を始めるに当たり、王族男子の処刑を要求してきたのである。
 
 王族男子についてはほとんど戦死していたが、残った者も敗戦の責任を背負い、潔く自決した。

 この結果、ソンガイ帝国と惑星ノーサンブリアは停戦交渉を始めた。
 ただここでソンガイ帝国側から、暗に皇帝のハレムに女奴隷を献上すべきではと……条件が緩和されるかも……
 そしてその女奴隷は名指しされた。

 ノーサンブリア王国公爵令嬢エアンフレド

 宰相は、エアンフレドについては惑星ノーサンブリアは混乱の最中、エアンフレドの居所は不明、生きていれば差し出すが、治安機関も壊滅している状況では、拘束も不可、と回答した。

 その結果、当面は惑星ノーサンブリアはソンガイ帝国の軍政となるので、ソンガイ帝国で拘束する、となった。

 停戦は成立、ソンガイ帝国の進駐は明後日と発表され、ノーサンブリア王国公爵令嬢エアンフレドは、指名手配となった。

 それがキュネブルガ姫が、脱出を決意した日であった。

 キュネブルガが条件を呑み、どさくさで何とか雇った女性パイロットがヨットを動かして、ノーサンブリア宇宙港を出港したのはその日の夜半、ソンガイ帝国軍はノーサンブリア星系の外縁部に待機していた。

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