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第十章 エラム航路

女官長さんたち、ヴァルキュリヤを篭絡す

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 さて、エラムでいう14時、テラの時間に直すと17時前、夕食の時間になりました。
 マリーさんがハンバーガーと芋類のフライ、及びエラムの女が大好きなココアをつくってくれました。

 アンジェリーナさんが、
「外で控えてられる方々も呼ばれては?共にいただきましょう、マリー様、追加を頼んでもよろしいでしょうか?」

「ありますよ」
 シルビアさんがドアを開けて、
「一緒に夕食を食べませんか?同じ方に仕える者同士でしょう」

 ヴァルキュリヤチームの驚いたような顔、ぴりぴりしていましたからね。
 おずおずと入ってきます、戦の乙女の面影はどこにもありません。
 このメンバーの中では可愛いお嬢さんのようです。

 ロランスさんが、「こちらにお座りなさいな」と席を勧めます。

「お口に合いませんでしょうが召し上がれ」
 マリーさんが勧めますと、「ありがとうございます」と神妙に座りました。

 そのあとは、和気あいあいとなります、さすがに百戦錬磨の女官長さんたち、扱い方のうまいこと……
 あっさりと篭絡したような感じです。
 この手腕を目の前で見ると、背筋が寒くなりますね。

 あとは根掘り葉掘り、とくにテラでの私の行動を聞き出しています。
 ヴァルキュリヤ・ハウスの生い立ちも聞き出しています。

 でも、この女官長さんたち、皆、それなりに苦労をした方たちばかり。
 しかもエラムの人間はすれていないので、つらい過去に涙を流してくれます。

 アンリエッタさんが、
「愛玩用なんて、それで戦士になったのですか?」
「さぞや悔しかったでしょう、情けなかったでしょう、でもがんばったのですね
「ヴィーナス様、勿論この娘さんたちの行く末については、責任を取るのでしょうね!」

「それは……」
 この場のメンバーでありませんが、オブザーバーとして出席していた薫さんが、
「本人たちの意思に任せています、このままお仕えするか、このエラムで、余生をのんびり過ごすか、このエラム滞在中に決めるようになっています」

「……それって、お仕えしなければ、テラには自由に戻さないということですか?」
「申し訳ないことですが、そうなります」
 薫さん、そうなのですか?

「理由は察することが出来ますが……」
 アンリエッタさんが、こういいました。
「どの娘さんも可愛いし、そうですね、無理することはありません、エラムに住むなら、私が後見になりましょう」

「とりあえずヴィーナス様がお帰りになるまで、私の家にホームステイしなさい」
「ジャンも家庭を持ちましたし、ピエールもさびしそうですから」

「それに戦士なのですから、神聖守護騎士団の総長の家にいるなら何かと便利でしょう」
「よくエレンもアグネスもオルガも遊びにきますから、仲良くできるでしょう」
 
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