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第十二章 テラとアース

破滅の問題が絡み合っている

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 あえて敵を探すなら、浮かび上がる存在があります、野良アンドロイドと、多分、軍事用機械アンドロイドたる、監視用移動端末エールを無力化した存在……

 正規のエールを無力化する存在とは……ヴァルキュリヤのため息のなかに、気になる名前があります……
 全知のヘルヴォル・アルヴィトさんが、官能の果てにいった言葉……

「イザナギ、イザナミ、時の終わりのヴァルナの娘に……」

 イザナギ、イザナミ……この日本神話に出てくる神の名前……男神、女神です。
 時の終わりのヴァルナの娘に……この後が知りたいですね……
 やはり日本に行く必要があります、なにかがあるのでしょう。

 いままたエール以下、肌を合わせ保護下においた女がいます。
 この女たちの為にも、ナタナエルの黙示録に書かれている光に、導かなければなりません。
 世界をめぐり思ったことです。

 ハルマゲドンは何を指しているのかは解りませんが、終末を迎えさすわけにはいきません。

 このテラにおいて、ユダヤの優位は私の故郷、地球の比ではありません。

 ユダヤの思考が世界を覆っているのなら、残酷で狡猾なダビデを聖人のように褒めあげる聖書、そこに流れる思想が主流となるなら、このテラの根幹が征服ということが理解出来ます。

 私のように、国風の考えに染まる者なら、聖書の愚かさに気がつくはずでしょう。

 牧師はその昔の、血まみれの手で何を説くのでしょうか。
 歴史はそれを証明しています。
 キリストの後継者の手は血まみれ、力づくで他を奪いその後に、理屈をつけているのです。

 しかし惑星テラでは、それは許容されることと認識しました。
 その地にはその地の正義があるのです。
 だれもそれを断罪することはできません。
 エラムでもそうです。

 エラム世界が成立するためには、奴隷制度が不可欠なのであり、それを否定すれば、さらなる不幸が襲いかかってくるのです。

 私はそれを嫌ほど見てきました。
 戦慄のエラムの過去が、私に自身の価値判断がいかに頼りないか教えてくれました。

 アスラ族の一派であると思われる日本には、昔からヘブライとのつながりが指摘されています。
 テラの世界史を眺めれば、このキリストの時代の前後に惑星テラの何かが、隠されているように思います。

 これはナタナエルの事と、私は思っています。
 ナタナエルの何かが、日本にはあるはずです。

 日本は高御産巣日神(たかみむすびのかみ)がおわします所、私をここへ呼び寄せたほどのお力を行使して、私に何をさせたいのか……

 どうも、テラの見えている滅亡だけではないのでは……
 ユリウス五世聖下との話し合いの結果、火星をテラフォーミングすれば、何とか解決できるかもしれないのですが、これだけ……と思ってしまいます。

 でも今は、私の問題として考えましょう。
 いまや、このテラはエラムと航路が繋がれています。

 もし何らかの理由でテラが壊滅すれば、私の愛するエラムにも悪影響が及ぶでしょう。
 まして、いまやテラは、私にとってはエラム同様、愛しい星なのですから……

 そして、一つの疑問があります、なぜハレムが出来てしまうのか、エラムの時は理由に納得していましたが、テラにおいては理由がありません。
 自身がどこかに望んでいるとしても、確かに異常なのです。

 否応なくハレムが出来る理由……そしてテラの問題は、いくつかの破滅の問題が絡み合っている……

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