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第二章 ベネデッタの物語 魔法女学校

ノルマは酒瓶十本

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 女スパイとして、美子の側に潜入したベネデッタですが、もともとはイタリア警察軍、カラビニエリと呼ばれる国家憲兵のような軍の士官でした。

 『ロードス及びマルタにおけるエルサレムの聖ヨハネ病院独立騎士修道会』、つまりは聖ヨハネ騎士団との連絡調整をしていた関係で、シャルル枢機卿と知り合いスカウトされたわけです。

 事務処理なら何とかできますが、やはり軍人ですから、このようなハレムのお守り、しかもいわば色仕掛けの女を、献上するようなことは苦手なのである。

 ……良い知恵が……そうだ、こんなときは美子さまに……湯船の謁見なら訴えることもできる……美子さまのスケジュール表はどこへ置いたかしら……

 ハウスキーパー事務局が、毎月始めに二か月分をまとめたものを、各人へ送ってくれますので、どこにいるか分かるのです。
 ただこれはあくまでも予定、変わることもありますが、次の配布まで修正はありません。

 ……今はエラムにご滞在、エラムで湯船の謁見は至難の業と聞くけど……マルスは無いか……おや、チタニアステーションに一泊……ハイデマリーのところだけど、大風呂あったかしら、聞いて見るか……

 ベネデッタは、ハイデマリーにオルゴール通信をつなげます。
「久しぶり、元気にしていた?」

「銀鉱山が忙しくてね、一攫千金の山師たちの管理だから、体力勝負よね、でも私には向いているみたいね、で何か用?」
「ちょっと教えて欲しくて連絡したのよ、チタニアステーションに大風呂あるかしら?」

「そこそこのはあるけど、何で聞くの?」
 ここでベネデッタは、ハイデマリーに抱えている問題を話しました。

「大変ね、私には無理ね、そうだ、その日は私が夜伽の順番なのだけど、湯船の謁見が出来るように、細工してあげようか」
「アマゾネスが全員で宴会でもして、美子様をお呼びすればいいのよ、そしてそのままお風呂、そして皆で夜伽をするわけよ」

「皆で?」
「そう、皆で、根回しはベネデッタがするのよ」
「分かったわ、皆でパーティーなんて久々よね」
 
 ベネデッタは、残りのアマゾネスのメンバーに参加を促しますと、当然のように全員参加、なんか非常に盛り上がって、ベネデッタの湯船の謁見にも、皆で協力することになりました。

 美子が来る前日、久しぶりにアマゾネスのメンバーが顔をそろえます。
「皆、飲むものを持ってきた?」
「ノルマ分は持ってきたわ、一人十本よね」

 イギリスは、かなりの人間がマルスへ移住してきています。
 残ったのはほとんどが新たな移民の方々、古き良きイギリスはマルスに移っています。

 その関係で、スコッチ業界はそのまま移ってきているのです。
 当然その後の資産移設で、スコッチの在庫なども移ってきています。

 フランスは半分程度が移住してきていますが、北フランスが主流です。
 カルブァドスなどのアップル関係はマルスへ移住、その関係でイギリス同様、在庫などもマルスに移設されています。

 フランスワインもアルザスなどです、ドイツは八割がた移住してきていますので、ワイン産業は盛んです。

 お酒に関しては、スコッチウィスキーはマルスでも困らないのですが、コニャックやアルマニャックは、マン島での交易でしか手に入らないのです。
 まぁドイツ産や日本産のブランデーは、マルスで生産されています。

 ラムやテキーラは、南米との交易が比較的スムーズですので手に入ります。
 ウォッカはロシア地域での特産です。

 この日の宴会には、ドイツのコルン、スウェーデンのアクアヴィッテ、そしてウィスキーにウォッカ、テキーラなどが転がっています。
 かなり騒々しく盛り上がっているところへ、美子さんが早めにチタニアステーションにやってきて、そしてアマゾネスの宴会に乱入した訳です。
 

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