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第三章 ネマの物語 『栄光のほうこくまる』

カウシャーンピー沖合、練習艦隊を発見

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 「マツヤ王国のヴィラ―タナガラ港に、入港可能か問い合わせしてくれ、カーシー王国でもあのようでは、マツヤ王国では無理かもしれない」
 
 事実、マツヤ王国からの返事で、
 
 ヴィラ―タナガラ港の入港は、現在港湾施設の大規模拡張工事中で不可能、沖合に停泊する分には可能、亡命申請はマガダ王国との国際関係上、認められない。
 
 というものでした。

「亡命申請は不可か……沖合に停泊する分は認めるか……機雷があるやもしれんな……しかし執政官府の人員を収納しなくては……」 

 現地の出先機関との交信は可能でしたので、収納人員を聞くと、5名ほど……
 テンダーボートに乗り、夜間に脱出するとの返事でした。

「夜間に脱出?相当情勢が悪いようだが、なぜ沖合の停泊は認めるのか……やはり機雷があるのか……」
「どこの誰が敷設したのか不明……という訳か……」

 ネマ船長は、指定の泊地の場所を勝手に変更しました。
 そして無事に人員を収納、錨を上げたのです。

 事実、指定された場所には機雷が敷設されていたのです。
 ヴァッサ王国海軍の機雷敷設潜水艦、サフィール級が全力で敷設したようなのです。

「つぎはヴァッサ王国だが、カウンシャーンピーは無理ではないか?」
「とりあえず入港可能か問い合わせをしてくれ」

 返電は不可、亡命申請は却下、領海にも入るなということでした。
 執政官府の人員は国外追放とするので、領海外で引き渡す、ということです。

「仕方ない、指定の海域に向かう、警戒を緩めるな」
 
 “ほうこくまる”が指定海域に到着すると……婦人海上戦闘団の艦艇が遊弋しています。
「友軍です!第二揚陸戦隊と練習艦隊です!」

 発光信号で、『到着を祝す』と言ってきてくれました。

 第二揚陸戦隊の12隻の一等輸送艦特々が廻りを取り囲んでくれます。

「船長、特々なのですが、回天四型改を全艦積んでいるようですが……」
「本当だ……艦隊決戦でもする気なのか……」
 回天四型改とは巨大な遠隔操縦魚雷で、一発で戦艦クラスを撃沈できる代物です。

 そうこうしていると、ヴァッサ王国海軍が執政官府の人員を運んできました。
 乗せてきたのはクールベ級練習戦艦です。
 このクールベ級は四隻あり、二隻はこの時点で練習艦に改装され、残りのうち一隻は脱出時に座礁、別の一隻がアールヴヘイムン条約加盟国連合艦隊に参加したのですが、このヴィーナスさんの艦隊に撃沈されたのです。

「クールベ級練習戦艦に乗せてくるとは……」
 練習戦艦といっても主砲は健在です……

 発光信号で人員を引き渡すので、カッターをよこせと言ってきました。
  
「カッターを下せ!」
 人員を引き取りにカッターが下され、殺気の満ちた海面を漕いでいきます。

 何事もなく引き渡された人員を受け取り、カッターが戻ってきました。

 クールベ級練習戦艦が動き出し、“ほうこくまる”の真横を通り過ぎていきます。
 副砲が照準を合わせています……
 こちらの練習巡洋艦も主砲の照準を、クールベ級に合わせています……

 そのまま何事もなく、クールベ級練習戦艦は戻っていきました。
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