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第四章 ニライカナイへ

お風呂でご挨拶

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「クリームヒルト!」
 スタイル抜群、美脚のお姉さんがそこにいました。
 しかも胸が揺れています。
「ジゼルさん!」

 クリームヒルトは、この南米出身の美人のお姉さんとお仕事をしたことがあり、以来仲良しになったのです。

「しばらく見ないうちに、女らしい身体になってきたわね……美子様とご一緒にいるとか聞いているわ、羨ましいわね、毎日してもらっているの?」

「そんなにしてくださらないわ……茜姉様がご一緒ですから……」
「茜姉様?イシス様の事?クリームヒルト!イシス様とそんなに親しい中なの!」

「エロい関係と思っているようですが、それは絶対に有り得ません!」
「冗談ですよ、もぅ、若い娘はすぐに真に受けるのだから」

「あら、クリームヒルトさん!」
 別の声が聞こえました。
 アナ・テナリオさんとメイサ・チェさんが、湯船の中に居ました。

「ご無沙汰しています」
「そちらの方は?」
「今度、側女になられた方々です」
 アナ・テナリオさんもメイサ・チェさんも、自己紹介などをしています。

 宇賀さんが、
「初めまして、宇賀真琴ともうします、こちらは稲田真白、この娘らは佐田町子、大宮静子、田中美千子です、よろしくお願いいたします」
 丁寧に頭を下げています、南米の三人娘さん、すこしたじろいでいるようです。

 なんといっても宇賀真琴さんは空狐、数千年を生きてきたと推測できる、神に近い存在です。
 しかも一族、一万名程度を率いていますので、いわゆるオーラが、知らず纏ついているようです。

「それにしても宇賀さんってお綺麗ですね……なんともいえぬ気品が……」

 クリームヒルトは思いました。

 ……ここに来られる方で、美人でない方はいない……皆は自分の欠点が見えて、そして他人に自分のないものを見つける……

 アナさんもメイサさんもジゼルさんも、輝くばかりの美しさ……南米の方々特有の底抜けの明るさが、その美貌をさらに眩しくしているのに……

 宇賀さんたちとは別の魅力があるのに……
 クスっと笑ったクリームヒルトでした。

 湯船の中には、アチラコチラの美女さん達が……
 かしましいマチ、シズ、ミチの三人もおとなしいこと……借りてきた猫、いえ、借りてきた狐ですか……
 そんな事を考えていますと、大物がやって来ました……

「貴女がクリームヒルトさん?」
 声をかけられて、湯気の中のその相手を見ると……イエロー・ゴールドのチョーカーをつけている方です。

 弾かれたように、南米の三人娘とクリームヒルトは直立不動の姿勢になってしまいます。
 宇賀さんたちも、クリームヒルトの様子を見たのか、慌てて真似をしました。

「そんなに畏(かしこ)まらないで下さいな……ここはお風呂ですよ」
 優しい声です。

 さすがのクリームヒルトも、誰かは十分に承知しています。

 愛人さんです……ヴィーナス・ネットワークの女たちの中では最高クラス……
 アナスタシア様……

 何でこんな所に……

「サリーさんと、お茶でも飲もうとエラムから出てきたの……」
 陳腐な事を言っていますね。

「明日、ハウスキーパーに会いに行くの?」
「はい」
 クリームヒルトは、宇賀さんたちを紹介しています。

「明日はね、愛人会議なの、また会えるでしょうね」
「……」

「アナスタシア!こんな所でしけ込んで、もう出るぞ!おや、可愛い側女さんたちと話し込んで」
「ビクトリア、この娘がクリームヒルトさんよ」
「ほぅ、じゃあ私たちと同じか、確かキッカワと名乗れるのだよね、私はビクトリア、キッカワ・ビクトリア、以後よろしく、アナスタシア、飲みに行こう♪」

 二人の愛人さんは、あっという間に出ていきました。
「いったい……何だったの……」
 クリームヒルトが呟いていた頃、二人の愛人さんは……

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