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第五章 ハウスキーパー

ハウスキーパーの館

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 三人の女子中学生は、別室でお菓子をいただくことになり、宇賀さんと稲田さんが残りました。
 サリーさんが次のように切り出しました。

「お嬢様は、貴女たちをお抱きになられました、私たちの主は何の考えも覚悟もなく、女をお抱きにはなりません」
「……」

「貴女はお嬢様と姉上様、つまり美子さまと茜さまをまだ理解されていないようですね、お二人は全てお解りですよ」
「当初、お二人は蓬莱に対して、介入はされないとお考えだったのです、なのになぜ宇賀一族をかばったのか、クリームヒルトが何やら訴えたと聞いていますが、まさか真に受けているとは、思っていないでしょうね」

「……」
「宇賀一族は蓬莱の生物ではない……」

 青ざめた顔になった宇賀さん……
「……正直私たちが、どこから来たのかはわかりませんが、いい伝えでは、今住む世界は私たちの父母の地では無いといわれていますが……」

「美子さまからの書簡では、多分テラの出身だろうとあります」
「私にもわからないことなのですが、お二人は貴女たち一族を蓬莱に運んだだろう存在を、推測できるそうです」
「テラに対して、美子さまは責任と義務を負っておられます」

「こういってはなんですが、宇賀一族も蓬莱に対して何らかの義務を負っていた、多分守護者としての義務、そう美子さまは書かれています」

「書簡では、蓬莱の人々は一線を超えている、宇賀一族を蓬莱に運んだだろう存在も、諦めていると……」
「もはや宇賀一族の蓬莱への任務は、解除され撤退の時期にきている」
「ゆえにその存在が、宇賀一族を引きあわせたのかも知れないと……」

「そうなのですか……」
「美子さまも、蓬莱には縁があるとおっしゃっています、内心では何とかしようとのお気持ちと拝察致します」

「しかし私たちとしては、美子さまにこれ以上のご負担はかけられない、美子さまは……とにかくお休みいただかなくてはなりません」

「もし美子さまにご負担をかけるようなことが発生すると、ミリタリーが黙ってない、軍権を握る茜様でも抑えられなくなる」

「ミリタリーは美子さまの為なら、本当に何でもします、もっともそれは私たちとて同じ思い、その事は美子さまご自身理解されています」
「だから止められなくなる……ミリタリーが動けば、冗談抜きで蓬莱は一瞬で消滅します、これは誇張ではありませんよ……」

「とにかく宇賀一族の今後のことですが、一族全員すみやかに、蓬莱ステーションシティに移住するようにとのことです」
「そしてそこから、惑星蓬莱の監視を命ぜられていると思いますが、蓬莱での物資などを扱い、このヴィーナス・ネットワーク世界の各地と交易して、自活するようにと仰せです」

「いま惑星世界管理局局長の、天照大神(あまてらす)さんに来てもらっていますので、美子さまのお考えにそって、今後の事をよく相談して下さい」 

「天照大神(あまてらす)さん!」
 とサリーさんが声をかけると、隣室のドアが開き、完璧なギリシャ風美人が、侍女を従え入って来ました。

「では天照大神(あまてらす)さん、私は少し愛人会議に出なくてはなりませんので、後はよろしくお願いします、終わったらそこのテラスでね」
 サリーさんは愛人会議に出るために、部屋を後にしました。

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