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第十五章 教団領へ
01 公演依頼状
しおりを挟むセリム一座は絶好調です。
イシュタル女王の女好きは、大陸全土に轟いているようで、その女王のご贔屓の踊り子一座、公演依頼が山のように来ます。
ニコルさんが、だんだんシャイロックになっています。
私たちをこき使うこと甚だしく、移動ハレムは閑古鳥です。
嬉しいような、悲しいような……
とにかくニコル座長は最初の約束通り、夜のほうは完璧に抑えてくれています。
かなり想像外の方法ではありますが、なにかニコルさんの意趣返しとも取れなくはないですが……
アムリア帝国の町々で、興行を打ちながら、私たちは教団領へ近づきますが、すぐに訪れることはせずに、教団領からの公演依頼を待つことにしています。
これはダフネさんが、リリータウン経由でジャバ王国へ出向き、イシュタルの居室で、アポロさんと打ち合わせた結果の方針です。
知恵者二人の悪知恵ですから、間違いはないでしょう。
こうしてアムリア帝国で、どんどん評判が上がっていくと、またこの辺境領主どもが、私たちの代価は幾らか聞いてきます。
ニコル団長が、イシュタルの名をだして、代価はジャバ王国に問い合わせてくれと、返答しています。
アムリア皇帝ならいざ知らず、このあたりの田舎領主に、ジャバ王国とことを構える度胸などはありません。
イシュタル突撃隊が側にいるということは、私たちはイシュタル女王の庇護の下、ある意味、愛人の監視も兼ねていると映ります。
思わずアポロさんに言いたくなります、「お主も悪じゃの~」
ある日、待ちに待った招待状が来ました。
それは次のようなものでした。
公演依頼状
セリム一座座長殿
本日、神聖教賢者会議は中央神殿舞踊場にて、神に奉納する舞いをセリム一座に依頼することと決した。
委細はこの書面の持ち主に対して、神聖守護騎士団行政府で説明するので、早急に教団領、中央神殿までお越し願いたい。
神聖教大賢者代理
依頼状とありますが、公演命令の間違いでしょう。
断られることは念頭にないみたいです、もっとも断るつもりはありませんが。
「いよいよ来ましたが、大賢者代理とはなんですか……」
とダフネさんに聞いてみました。
「神聖教は内部対立が久しく続いて、大賢者を選出できなくなっているのは、巫女様も知っておられると思います。しかし大賢者の名のもとに、行わなければならないことも多々あります。」
「このような、特に神に関するもろもろのことは、黒の巫女様か、大賢者が行わなければならない決まりです。しかしどちらもいないので便宜上、代理が立てられるようになったのです。」
「前にもご説明いたしましたが、私が大賢者の頃には内部対立は激しく、血で血を洗う状況でした。」
「それでも何とか大賢者を選出していました、その後さらに激しくなり、現在の状況になっています。」
「大賢者代理とは大賢者が行う行ことについて、事務的手続きをする者で、大賢者の権威がある訳ではありません、次席賢者ともいわれています。」
「少し聞きますが、この公演依頼状はキリーでの会議のグレーゾーンの結果ですか……」
「このことに関してアポロ執政が、お腹の中は聞かぬものといってくれ。」
と言付かっています。
「そうですね、たしかに約束しました、ではあの時、話題に上がったオディッシーの出番ですか。」
ダフネさんが頷いたので、私はインド舞踊のオディッシーを練習することにしました。
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