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第十五章 教団領へ

02 オディッシーには気をつけましょう。

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 オディッシーとは、インドのオリッサに永きにわたり伝えられてきた奉納舞で、シヴァ神の偉業を讃える舞いから始まり、パラヴィと呼ばれる踊りを経由して、神様に全身全霊を献じる舞で締めくくります。

 上半身は優雅にゆっくり踊り、足は複雑にステップを踏みます、身体の内部に力をため込みながら、ゆっくりと停止することなく、連続的に踊っていくさまは、神を讃える神秘的な姿を、見る者に感じさせます。

 無地の布地で作られたスカートを履き、髪を後ろでまとめ、白い花飾りをし、銀色の装飾で身を固めた私は、皆の前でオディッシーを舞って見ました。

 後でダフネさんに感想を聞いてみると、
「巫女様に神様が下りてきたような神々しさを感じました。」
「頭を下げずにはいられなくなりました、百人が百人とも巫女様のこの踊りを見れば、巫女様が黒の巫女様と確信します。」
「巫女様が中央神殿舞踊場で踊れば、私やアポロの小細工は必要ないと実感します。」

 サリーさんもビクトリアさんもアナスタシアさんもアテネさんも、エラムで生まれ育った人は皆こう云いました。
「心底、黒の巫女様とは有り難いものだ」と……

 でも変態アンドロイドたちは違います、
「やっぱりベリーダンスのほうがいい、愛してもらえると期待できるほうがありがたい。」

 この二人の頭には何が詰まっているのやら、きっとエロウィルス100パーセントで製造されたのでは、と疑ってしまいました。

 それにしても疲れました、オディッシーを踊ると神経が高ぶるのです。
 今日はサッサと夕食を済まして、寝てしまいましょう。

 私は早めに寝室へ戻ろうとした時、アテネさんと目が合ってしまいました。
 興奮気味でしたので、不覚にもじっと見つめてましいました、あぁ……
 でも望んでいたのかも……

 アテネさんも、私を見てもじもじしています。
「アテネさん、寝室へ行きますか?」
「はい、イシュタル様」と……
 素早いお返事でしたね。

 朝、まぶしい日差しに目を覚ましますと、どうやらとても恥ずかしい格好で寝ていたようです。

 おかげで私は朝早くからお風呂に入っています。
 といってもここはまだアムリア帝国領、タライのお風呂ですよ。
 サリーさんがやってきて、ネチネチと責めてくれます、なぜかオカンムリです。

 サリーさんのご機嫌をとるために、ココアをご馳走しました、サリーさんはココアで単純につられます。

「お嬢様、別に私は妬いている訳ではありません。」
 それは完全にやきもちというものではありませんか?
 でもそんな黄色いやきもちも、可愛く見えるのがサリーさんのいいところ。

 何をともあれ、オディッシーを踊った後は気をつけましょう。

 昼前に皆でそろって、公演依頼状を眺めています。

 ダフネさんが説明してくれた後、アナスタシアさんが、
「神聖守護騎士団行政府というのは何でしょう?」
「私の記憶によれば、教団領の内政は、たしか神聖教賢者会議の下にある、内政庁が取り仕切っていたはずですが……」

 ダフネさんが、
「私もそう思っていましたので、昨夜、アポロ執政とトール隊長と会談したところ、アポロ執政の報告が、このあたりのことを掴んでいました。」

「それによると教団内部では、軍事クーデターが起こっていて、神聖守護騎士団が実権を握ったとのことです。」
「このことを利用して、あとはお腹の中といっていましたので、詳しくは聞きませんでした。」
 多分、ダフネさんは詳しく聞いていると思います。

 夜、サリーさんが意気込んでやってきました。
 どうなったかは野暮というもの、ただ昼前にやっと起きた次第です。 
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