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第十五章 教団領へ
06 喪中の息抜き
しおりを挟むビクトリアさんが部屋にやってきました、ダフネさんが心配なのですね。
「あるじ殿、ダフネは大丈夫か?」
「私は大丈夫。」
ダフネさん、気がついたのですか。
「巫女様におあずけを食らっていましたが、利子付きで返してもらいました。」
「ダフネさん……そう云ってもらえると……ごめんなさい、ごめんなさいね、私のせいで……」
「巫女様、今度はお腹がすきました、責任とって、今度ココアでもおごってください。」
「喜んで、なら今月の私のチケットを全て使って明日ティーパーティをいたしましょう。」
明日は休養日です、久々に私がお菓子を作りましょう。
アムリア帝国は喪に服していますが、ささやかな息抜きぐらい、許して貰えるでしょう。
アナスタシアさんも、気を紛らしていただかなければ……
私は朝からティーパーティの準備をしています、皆さんは甘い物好き、パンケーキを大量に作りましょう。
その上に乗せる、ジャムやチョコレート、蜂蜜などを、これまた大量にチケットをはたいて買いました。
これで今月はすっからかんです。
テーブルには、近くで積んできた野の花をあしらいました。
サリーさん、ビクトリアさん、アリスさん、小雪さん、ダフネさん、アテネさん、アナスタシアさんも、ニコルさんも、マリーさんも呼びました。
私を入れて総勢十人です、やはり女ばかり十人もそろうと、かしましいですね。
「美味しいですね、マスターは誰から学んだのですか?」
と小雪さんが聞いてきます。
「このパンケーキはよく姉が作ってくれたのですよ。」
「最初の頃は、へたくそで、真っ黒なおこげの塊でしたけど。」
「私のために、一生懸命に作ってくれました。」
「こうして思うと、ダフネさんの手料理をアテネさんが食べられるのも、愛情を感じるのかもしれませんね。」
「きっといつか、ダフネさんも食べられるものを作れるのでしょうね。」
「巫女様!」
「たしかにダフネの手料理は物凄いものがあるが、進歩するのだろうか?」
「ビクトリアまで!そりゃあ、私の料理は不味いですよ!でも愛情はピカ一です。」
サリーさんが、
「そういえば、このメンバーで料理のできるのは、お嬢様とアナスタシアさん、ニコルさん、マリーだけ、小雪さんの料理の話は、聞いたことがないですね。」
「サリーさん、小雪先生は教え子から、ただ飯を食べていた身、野暮なことは聞かぬものです。」
アリスさんが、
「そういえば、私にはお姉さまについて、お料理を習えと指示しておきながら、小雪先生は批評するばかり。」
小雪先生、風向きが悪くなっていますね。
小雪さんが、
「確かに料理はできません、だってフライパンもお玉も、誰かを引っ叩く武器にしか思えないもので……」
フライパンは武器ですか、確かに奥様に引っ叩かれている殿方は、わんさかいた気がしますね。
アテネさんが、チョコレートを口につけています、「イシュタル様、美味しいです……」、そんなに感激しなくて良いですよ、ほら、口をぬぐいなさい。
アリスさんもスプーンを舐らないの。
私たちが、やいのやいのと騒いでいる中、アナスタシアさんは寂しそうです。
「アナスタシアさん、今日一日だけは、悲しいことを忘れて楽しんでください。」
「貴女は私の妻の一人、ここにいるのは貴女の姉妹、喜怒哀楽は、ともに同じくいたしますよ。」
「アンリエッタさんが、貴女を支えていたように、今度は私たちが支えますよ。」
アナスタシアさんが少し微笑みました。
そう、心の健康はとても大事です。
いつかミハエルさんが、云っていたのを思い出します。
人間、溜め込んだものをださんと破滅するぞ、破滅は忍び寄ってくる、気をつけることだと。
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