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第十八章 休養

06 第一倉庫の管理人

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 リリータウンで休養していると、アリスさんがやってきました。
「お姉さま、お電話が入っています。」

 お電話?
 ここリリータウンは閉鎖空間の街、外部と通信することがない以上、電話なんてありません。
「誰からなのですか?」
「私には言えません、私たちより上位の存在です。」

 アンドロイドのアリスさんより上位?
 ということは関係者なのですね、いままでお手紙だけでしたが、ついに来た!

 私は急いで電話に出ました。
「ヴィーナスです、いや洋人です。」
 電話の向こうから、男の声が聞こえます、リリータウンで初めて聞く男の声です。

「お初にお目にかかります、わては第一倉庫の管理人と申します。」
「お顔を見てはいまへんが、ごっつう別嬪はんと聞いておます。」

 えらく下手な関西弁です。
 いったいこの間違った知識を、どこで知ったのですか?

「御用はなんですか?」
「そんな邪剣な言い方、傷つきまんな。」
 だ・か・ら・、その臭い関西弁はやめなさい、大阪人に殺されますよ。

「ヴィーナスはんにお願いがありま、第一倉庫で作るコピー製品の、原料調達に協力してくれまへんか?」
 いちいち感にさわる物言いですね。

「つまり資材を現地調達したいと、いわれるのですか。」
「さすがはヴィーナスはん、おつむのできがよろしいでんな。」

 急に電話の声のトーンと、しゃべり方が変わって、
「マスター、そこにいるアリスに席を外させてもらえませんか?」
 アリスさんの上位者、なにか理由があるのでしょう。
 アリスさんにその旨をつたえ、外してもらいました。

「お望み通りにいたしましたよ。」

「ご立腹のご様子ですが、すこぶる大事な話があります、他の誰にも聞かれたくない話です。」
「マスターは主席という存在に出会われたと、聞き及んでいます、私も初めて知る存在です。」

「この主席はマスターにとって敵になりうる存在。」
「第一倉庫を預かる私としては、マスターに物品を提供することが第一の使命。」
「主席という存在がある以上、もしもの場合、物品提供をダイレクトにする必要が考えられます。」

「その場合、現地調達の資材で、物品を作成できる方法をマスターと協議する必要があり、こうして非常手段に訴えた次第です。」

「アリスには申し訳ありませんが、この電話の記憶は消させていただきます。私にはそれを実行する権限を与えられています。」
「またこの電話も、この会話が終了した時点でゴミ箱に捨ててください、ここまではご了承いただけましたか?」

「了承しました。」
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