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第二十章 黒の巫女略奪される
04 脱出
しおりを挟む「汝が望むものを捧げる!」
すると頭の中にカタログが浮かび、手の中のものが崩壊し、カタログより選んだナイフが手にありました。
私は苦悶にのたうつ皇帝を跳ね除け、ナイフを壁に突き刺すと、そのナイフの刃で縛られていた手を開放することに成功しました。
私は無我夢中です。
ナイフを手に「汝が望むものを捧げる」、と唱えると再度カタログが浮かび、今度はMP5を手にします。
これは、ドイツのヘッケラー&コッホ社が開発した短機関銃で、9MMパラベラム弾を30発装弾しています。
私はこれを持って部屋を飛び出ました。
全裸にかまっている場合ではありません、私は向かってくる者へは容赦なく、乱射しながら走って逃げています。
弾が無くなれば、「汝が望むものを捧げる」と唱え、再度MP5を選択し、これを繰り返して何とか脱出に成功しました。
われに返って周りを見ると、どこかで見た景色です。
羞恥と屈辱と恐怖に私は錯乱しそうです。
でもかろうじて残っていた理性が、自分の格好に気がつきました。
なんとか唯一使用できる簡易魔法で、服を作り着ることに成功しました。
そして、あのピエールさんにおんぶされて越した、峠の道に分け入ります。
この道は、よほど地元の者でなければ知らない道、困難かもしれませんが、逃げ切るためには、この道を行くしかありません。
私は記憶を頼りに、峠を目指しました。
でも土地勘のある場所で助かりました、このまま峠を越えて、あの忘れられた教会に隠れましょう。
源兵衛さんの魔法しか使用できない今、それしかありません。
あの教会なら、サリーさんが見つけてくれるはずです。
私が生きて隠れるなら、そこしかないと判断できるはずですから。
前回、この峠道をおんぶしてもらって越えましたが、今は一人です。
多分誰にも会うことはないはずですが、警戒する必要はあります。
いつもいつも誰かに護られていた私、無力を思い知りました。
一人がこんなにも心細いなんて、いまさらながら自身の心の弱さを、罵倒したくなります。
多分皇帝は激怒しているはずです、なんせ玉を半分失ったのですから、ざまあみろです。
そのように考えると、すこし落ち着いてきました。
あの瞬間に決断を迫られれば、躊躇なくエラムの始末を選択していたでしょう。
まだいつもの魔法は使えないようですが、源兵衛さんの魔法がなかったらと考えるとゾッとします。
でもなぜあの時、皇帝を始末しなかったのか、よほど私は錯乱していたのでしょう、悔いが残ります。
なんか沸々と怒りが込みあがってきました、あの皇帝、いつかぶっ殺してやる。
あいつは狂っている、私と実の姉のアナスタシアさんを並べて犯す気だったなんて!
やはり始末しなければ、禍根が残るのでは……
いや、今は逃げることが肝要、生き残らなければ……
私は世界を何とかすると、誓ったのだろ!
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