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第二十二章 学園生活

02 課外授業を勧めます。

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 学校にも慣れてきた頃、私たちが食堂で昼食をとっていると、学長さんがやってきました。
 私を探していたようです。

「ヴィーナス先生、ジャバ王国公館長に聞いたのですが、先生の知識は半端じゃないと、そこで相談があるのです、先生は上級の学生達を見て、どう思われます。」

「たしかに問題ですね。全然学ぶ気がないというか、必要性を認めていないというか、若いから学問といってもピンとこないかもしれませんが、もう少しエネルギーを有意義に使えないものでしょうか。」

「そこなのです、なにか良い方法はないかと、ヴィーナス先生は外の人、視線が違えば良い考えも浮かぶかと思いまして。」

「学長、授業が終われば学生は何をしているのですか?」
「なにも、女学生ですから。」
 なるほど、それでは若さを持て余すはずですね。

「どうでしょう、課外授業などを考えては。」
「課外授業?」
「授業以外に皆でする行事などのことです。」

「たとえば?」
「部活動と呼ばれるものがあります。スポーツとか、習いこととか、勿論、興味ある専門分野とかを、自発的に習得することです、遊びを装って行うと、効果があるかもしれません。」

「またそれ以外に、全校対抗で行う運動会とか、学生が文化的なことを発表する文化際とか色々あります。」
「そうそう、皆でお弁当とお菓子を持って、社会見学や景色のよい場所を見に行く、遠足とかありますね。」
「要はエネルギーが余っているのです。若さを発散させ、色々な経験をさせるのが、肝要かと思います。」

「なるほど、良い考えかもしれません。」
「ヴィーナス先生、何か一つ試してくれませんか?」
「とりあえず遠足でもしてみますか、この町の名所とかはなんでしょう。」
「花が綺麗なのと、大陸一の劇場でしょうか。」
「劇場?」

「ほら、町の大通りにある大きな劇場です。」
 あの劇場って、そんなに有名だったのですか。
 どおりでアナスタシアさんが入れ込んでいた訳です。

「有名ですよ、この間も、あのヴィーナス・セリムの引退公演を仕切ったぐらいですから。」
「私も観に行きたかったのですが、チケットが手に入らなくて、残念なことです。」
「そうなのですか。」
「そういえばヴィーナス先生は同じ名前ですね。」

「遠い親戚なのです、一度会ったことがあります。」
「どおりでお綺麗な訳ですね、あの美女で名高いヴィーナス・セリムの親戚なのですから。」

 学長さんはさすが学者さん、疑うことをしりません。
 でも、劇場に遠足はまずいですね。

「綺麗な花の場所は?」
「ここより歩いて一時間ほどの所に野原があり、花が咲き乱れる場所があります。ただそこは教団の管理地で、教団公館長の許可がいります。」
 ここもまずいですね。
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