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第二十二章 学園生活

03 屋台村で実習

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「ほかにないですか?」
「後は大通りにある屋台村ですかね。」

「屋台村?」
「いろいろな物品を売ったり、庶民の食べ物を提供したり、たしか人力の遊園地もあったと思いますが。」

「それです、ここにいる女学生は確か上流階級、将来、使用人を使い、家を守る婦人になる方たち。使用人になる庶民の実態を知るのも、悪くはないのではありませんか。」

「確かに云われればその通りです。」

「色々問題はあるでしょうが、初めの一歩を踏みださなければ何も始まりません。」

 というわけで十日後、私は上級クラスの女学生を引率して、屋台村に来ました。
 ここへ来る前にお財布チェックです、ささやかな金額を設定しています。
 無駄遣いなどできない額ですが、それでも庶民の二日分です。

 事前に司法関係には学長が根回しして、警備の人間が相当入っており、女学生一人一人の特徴がかかれた似顔絵を渡しています。
 やはり女学生ですし、かなり上流階級の娘さんたちということを考慮した結果です。

「さあ皆さん、その少ない額で、なにか一つ、役に立つと思うものを買ってもらいます。」
「勿論、お昼もこの屋台村で取ってもらいます。購入された物品は、後ほど学園内で展示公開しますので、恥ずかしくないように知恵を絞ってください。勿論、レポートつきですよ。」

「優秀な方には、学長の好意により、ポケットマネーでのお菓子をプレゼントするそうです。」
「屋台の皆さまに、迷惑をかけないように注意してくださいね。」

 女学生さんたちは目を輝かせて、一瞬でいなくなりました。
 あちこちから黄色い声が響いて来ます。
 これは屋台の皆さまには、ご迷惑なことでしょうが、効果絶大の予感がします。

 心配のあまりついてきた学長も、手ごたえを感じたのか満足そうです。
 ちなみにアナスタシアさんもアテネさんも、女学生ののりで、即座に消えてしまいました。
 だれよりも黄色い、アナスタシアさんの声が聞こえます。

「学長さん、レポートが楽しみですね!」
「どんなレポートが提出されるのやら。」

「さぁ、私たちも昼食を漁りに行きますか?」
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