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第二十五章 黒の巫女の降臨
01 円満退社
しおりを挟む大賢者の一行は大陸を巡礼、行く先々で歓迎を受けています。
なぜなら、大賢者は滅多に中央神殿より出ることはないからで、黒の巫女がいない以上は、事実上のエラムでの、女神の代理人に近い立場です。
長く空位になっていた大賢者が、大陸を巡礼するなどということは、有史いらい初めてのことで、教団内では反対が多かったと聞きましたが、そこはピーターさんの辣腕が、力を発揮した模様です。
ダフネさんと私は、頻繁に打ち合わせをしています。
この出来レースに、失敗は許されないのです。
ダフネさんの一行が、カルシュに近づいて来たので、私は辞表を持って、学長に面談しました。
「学長、大変申し訳ありませんが、よんどころのない事情で、退職させていただきたいと思います。」
「それは困ります、いくら臨時講師といわれても、ヴィーナス先生は学園の宝、なんとか考えを、変えてはいただけないでしょうか?」
「先生のおかげで、算盤がやっとこの女子部で認知されてきて、生徒たちのやる気も出てきた矢先です。」
「申し訳ありませんが、本当に家庭の事情で、仕方ないのです。」
「そうですか。」
学長さんのあまりの落胆ぶりに、私の覚悟もぐらつきそうですが、世界のため、なんていうより私の愛人さんたちのためです。
ここは決意をしっかりと持って、辞表を出させていただきました。
「せめて算盤についての質問には、答えていただける様にはなりませんか?」
私は考えた末に、
「ジャバ王国公館に、算盤についての質疑書を出していただければ、答えられるようにしておきます。」
この提案で、やっと学長さんは納得してくれました。
初級クラスでお別れの挨拶をして、上級クラスでも同様に挨拶をします。
「ヴィーナス先生、復職の予定はおありですか?」
と聞かれるので、
「今のところ予定はありません。皆さんは私の教え子です、先生としては、先行きを心配しています。」
「よい伴侶にめぐり合い、平凡でも幸せな人生を、心から願っています。」
「もしなんか困ったことが起きたら、ジャバ王国公館を訪ねてください、連絡手段を取れるように、お願いしてあります。」
こうして私は、円満退社にこぎつけました。
臨時講師といえど、退職はエネルギーが必要なのです。
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