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第二十五章 黒の巫女の降臨

05 第二幕

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 それでは第二幕を開くとしましょう。

 雷鳴が轟きます。
 神殿都市シビルの奉納舞台に、私たちは一緒に現れました。
 『存在の啓示』が、狂おしいように光り輝いています。

 ジジさん以下、この都市の住民に、黒の巫女の帰還を知らしめるために。

 私一人、舞台の上に椅子を取り出して座っています。
 そして側にはダフネさんが立ち、ビクトリアさんと小雪さんとアテネさんは完全武装でその側にいます。

 サリーさんとアナスタシアさんは髪を結いあげ、侍女風に佇んでいます。
 アリスさんは私があげた、小学校の男物の制服を着ています。
 鍵の所持者の登場です。

 ジジさんがやってきました。
 今の私は、圧倒的な存在感があるはずです。

 ダフネさんが、
「出迎えご苦労、黒の巫女様をお連れした、皆を集めよ。」
 ジジさん以下、緊急にシビルの主なる人々が集められましたが、多分、全住人が集まったのではと思えるほど人が集まりました。
 皆さん、『存在の啓示』で知ったようです。

 ピエールさんがいます、アンリエッタさんもオルガさんも、女官さんたちと共にいます。
 勿論、ピーターさんもいます。

 そしてアポロ執政とトール突撃隊長以下、イシュタル突撃隊の面々など、ジャバ王国の人もいます。
 手回しいいですね、アポロさん。

 ダフネさんが、
「お隠れになられていた、ヴィーナス様を探すために、女神様のお告げにより、私は世界を巡礼した。」
「お告げ通り、カルシュでヴィーナス様と出会うことができた。」

「いま私は大賢者として、この方を黒の巫女様と認める。」
「ここにいる神聖教の人々よ、女神様が遣わされた、黒の乙女ヴィーナス様に不満のある者はいるか?」

 ピエールさんが、
「神聖守護騎士団は忠誠を捧げている、我らはヴィーナス様の盾であり矛である。」

「何人なりとも、黒の巫女であられるヴィーナス様に手出しはできぬ。」
「我らはヴィーナス様より、ありがたくもマルスの紋章を授かった。この名誉ある旗印に、そむくことはない。」

 ジジさんも、
「無事のご帰還、心よりお祝い申し上げます。」
「大賢者以下、我らは巫女様の下僕、ご下命をお待ちしております。」

 ダフネさんが、
「皆に申し渡すことがある、知っている者もいると思うが、ヴィーナス様はジャバ王国女王でもあられる。」
「ヴィーナス様は退位を申し出られたが、ジャバ王国国民の総意をうけて翻意された。」

「ヴィーナス様は黒の巫女になるに際して、このことを信徒に図っていただきたいと、ご希望があり、いまここで皆に問う。」

「不服のある者はいま申し出よ、ヴィーナス様は御位《みくらい》につくことはない。」
 静寂が支配しました。

 ピーターさんが、進み出てきました。
「神聖守護騎士団行政府のピーターです、御覧の通り誰も異議はありません。」
「むしろジャバ王国と共に同じ主を戴くということは、行政を直接預かる私たちとしては望むこと、御懸念には及びません。」

 オルガさんも進み出て、
「私たちは、ヴィーナス様を黒の巫女様として、奥へお住まいいただく所存です。」
「私たち女官一同、ヴィーナス様をご主人と認識しています。」
「どうぞ、私たちでお疲れを癒してください。」

 まさか、この場でこのようなことをいうとは思いませんでした。
 これで私のハレムは公言され、認知されたようなものです。
 この先を考えるとため息が出そうです。

 観衆が、「さすがはイシュタル女王、頼もしい限り」、と云っているのが聞こえました。
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