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第二章 惑星間帆走宇宙船

ガリレオ号の航路

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 惑星間帆走宇宙船のプロトタイプ、ガリレオ号は自動航法でマルスに向かっていました。

 ……うまく第五惑星から脱出できた……『そのもの』はガリレオ号を離れて行ったが、少しばかり、こっそり作っていたマイクロマシーンを、第五惑星の衛星軌道にばら撒く事にした。

 ……どうやら第四惑星に向かっているようだな。
 メインベルトあたりまで来ているはずだ、マイクロマシンのパーツを、ここに半分配置しておくか。

 メインベルトは隠れるのに最適だ、幸い材料は豊富にある。
 ここに戦力を構築して、奴らの宇宙船を破壊してやろう、注目をここに集めるのだ、その間に……

 ガリレオ号は何事もなく、メインベルトを通り抜けていきます。
 エウノミア――メインベルトにある小惑星、直径255キロメートル、ウィキぺティア参照――をかすめた時、『そのもの』はマイクロマシンのパーツを、半分放出した。

 遠隔結合のまま、マイクロマシンは動き始めた。
 そしてエウノミアに豊富にある、ニッケル鉄で何かを作り始めたのです。

 ……上手くいった、ニッケル36 、鉄64、のニッケル鉄なら熱膨張が少ない、これで宇宙船を作れるだろう……
 
 そして残りのマイクロマシンのパーツを、『そのもの』は太陽に向かわせたのです。

 ガリレオ号はマルスの軍民兼用のドックに無事到着。
 荷物は軌道エレベータを使って、オリンポス山頂の、ガリレオ開発計画専用倉庫に降ろすことになっています。

 記念すべき荷物はイオの硫黄でした。
 マルスでは、硫黄はあまり取れなくて割高なのです。
 これからどしどしと硫黄が入ってきますので、化学工業の会社は喜ぶでしょうね。

 荷降ろしをして、簡単な整備の後に、ガリレオ号は今度は土星のタイタンステーションに開発機材を運び、タイタンステーションから、メタンをガリレオ衛星ステーションに運ぶ手はずです。

 一連のミッションを終えて、ガリレオ号はガリレオ衛星ステーションに戻ってきました。

 アリシアさんの嬉しそうな事、そうですよね、これでガリレオ開発計画に、弾みがつきますからね。
 ついでにタイタンからも、化学燃料を調達できますし、少なくともトリトンステーションまでは、自前の物資輸送の目途がついたわけです。

 ナーキッドでもお祝いムード、この惑星間帆走宇宙船を使えば、マルスの人類はソル星系を自由に航行できるわけです。

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