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第五十九章 明かされる隠し事

12 奴隷制度の必然性

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 古代レムリアの碑文

 『光輝く、黒の巫女様に申し上げる。

  我らは罪深き者なり、
  我らの罪を覗かれよ。

  慈悲の乙女が巫女様なら
  我らの罪を許したまえ

  英断の乙女が巫女様なら
  我らの行いを断罪されよ

  すべては巫女様の掌(たなごころ)のままに

  願わくば我らの罪で
  我らの子らを罰するなかれ

  願わくば我らの罪で
  我らの大地を罰するなかれ

  願わくば我らの子孫を
  愛され導かれんことを

  レムリアの者ども、ここに罪を悔いる』

 滅びゆく者が、自身のあまりの罪に、おそれおののきながら刻んだ、私宛の告白文……
 この文章は多分、『しもべ』さんも読めないでしょう。
 カタカムナ文字については、私の感が沈黙を要求しています。

 これに答えるなら、英断の乙女にならざるを得ません。
 本来、貴方たちの子孫が、自身を奴隷と無意識に思う責任を、取らなければならないでしょう。

 しかし根本は私の祖先にあります、その負債を私が背負うわけです。
 主席がいうように終わりにすれば、全てはすっきりしますが、古代レムリアの罪びとは、子らを罰しないでくれと懇願しています。

 たしかに子孫に責任はないのですが……
 なら私は、どうして責任を取らされているのでしょうか……
 その辺は考えないでおきましょう。

 しかし、この重苦しい気分は……

「もし食糧危機が、エラム全域に発生した場合、この家畜制度が復活しそうですか?」
 問わずにはおれない質問をしました。

「本来の家畜制度の技術は、今のエラムにはありません、かなり高度な技術が必要です。」
「しかし、家畜制度の本質は、いまのエラムでも成立可能です、かなりの確率で出現するでしょう。」

 それが出現したら、この世の地獄をみれるでしょう。

 多分、南部辺境諸侯領への侵攻を、当初の予定通り、封鎖作戦に出ていたら……
 この家畜制度が……

 よくぞあの時、素早く介入したこと、自分で自分をほめられそうです。
 しかし二三日はうなされました、さすがに気持ちが悪くて……
 これ以降、私は確実にお肉が嫌いになりました。

 でもこれでは、奴隷制度はなくなりそうにありません。
 このエラムの風習にも必然性があり、否定できないと思い至りました。

 女性過多をどうしましょう、女が多く、この地位を向上させるのもいいでしょうが、あまり向上させると、確実に男が軟弱になっていきます。
 それではエラムが安楽死してしまいます。

 世界が成り立つには、男の侠気が必要な時があるのです。
 この際、エラムの女性過多を解消するためにも、男の甲斐性を奨励しなければ……

 妻の十人ぐらい、どうってことない、こそこそと妾を囲うより、堂々と多妻になってもらいましょうか。
 女の嫉妬ぐらいで、おたおたする男はいりません。

 もっとマッチョな、ギラギラの男がいいでしょうね。
 やはり男は騎士団あたりに放り込んで、国民皆兵、徴兵制がいいですね。

 結局、異性婚多妻制と女性婚多妻制は、この惑星エラムの必然なのです。
 考えれば考えるほど、この制度に帰結します。
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