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第六十一章 神々の霧の中に
02 私はだれなの
しおりを挟む使命ってなんでしょう、自己満足……
イシスさんは知っていたのでしょうか?
ここで私は、一つのことに思い至りました。
なぜイシスさんたちは続けなかったのか、本当にそれが使命なら、今も続けているはずです。
それが突然に別の世界へ移動した。
これはなぜでしょう、イシスさんたちは、その果てしない時を過ごし、本当の意味がわかったのでしょう。
イシスさんはこういいました。
『世界をその手に、思うがままに、なすべきをなしなさい。アナーヒター、ヴァルナの娘』
使命とは、『なすべきをなす』ということでは……
結果ではなく、『なすべきをなす』その行為が使命としたら……
そもそも、結果を得ることが使命と、だれが決めたのですか?
イシスさん、貴女は『なすべきをなす』のですか?
突然、私は『大愚』という言葉を思い浮かべました。
災難に逢う時節には、災難に逢うがよく候(そうろう)。
死ぬ時節には、死ぬがよく候。
良寛和尚は良いことをおっしゃっています。
急に笑らえてきました、私は本当に愚か者です。
『なすべきをなす』ために、なにか看板がいるのでしょうか、そんな物は不要です。
イシスさんはチャンと云ってくれているではありませんか?
『世界をその手に、思うがままに』と……
神さま……
私は何者かが、私たちを見られていると知りました。
それこそ本当の『神』と呼ばれる存在が……
『あるがまま、なすがまま、なせるがまま』です。
私はエラムに来てからそう言ってきました、そして、いままた、言うべきなのです。
構えたら、それにとらわれます。
思いが深ければ、ぬかるみにはまります。
泥にまみれ草を噛むのも良いでしょうが、やはり明るく楽しくです。
相手があれば、相手になって思いましょう。
それが三千世界なら、その世界になって思いましょう。
我(われ)がと、思えばぬかるみにはまります。
難しいことはないのです、『正しくみればいのです』、そして行動すればいいのです。
世界を救う?
私が何ほどの者ですか、人は嫌でも自らを救うものです。
でもこぼれおちる人もいるなら、私の手を握ってくれればいいのです。
私は人のために泣けるのです、そして人のために怒れるのです。
ガルダ草原の戦いで感じたことです。
それだけですが、それでもいいなら私の手を握ってください。
盗人に 取り残されし 窓の月
良寛和尚の句です。
いろいろな取り方があるでしょうが、相手を思う心が確かなら、どのようなことにでも、盗まれないし壊されない、いつも清浄に人を導くように、いたわるように浮かんでいる。
そのようなイメージにたどり着きます。
イシスさんは、きっとこう思ったのではないでしょうか。
裏も見せ 表も見せて 散るもみじ
金のお家に銀の食器に囲まれても、草の庵(いおり)で欠けた茶碗の生活でも、その時その時に楽しみながら、相手になって思いましょう、そして行動しましょう。
私はだれでしょう。
私はヒロト・ヴィーナス・イシュタル・アフロディーテ・イナンナ・ウェヌス・アウシュリネ・アウセクリス・アッタル・シャヘル・ヴァカリネ・アナーヒター ヴァルナ・キッカワ。
長い名前でいいじゃないですか。
この惑星エラムの女王、女好きの困ったチャンで破戒と死の女王。
結構ではありませんか。
来るものはやっておいで、災難も死も会うべき時は会いましょう。
心がなぜか軽くなりました。
応援ありがとうございます!
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