87 / 152
第六十一章 神々の霧の中に
06 黒の女神
しおりを挟むリリータウンに戻ると、アリスさんと小雪さんが待っていました。
「マスター、姉上様、御苦労さまです、船は修理できそうですか。」
私が答えようとすると姉が、
「ねえ、私を姉上と呼ぶのは、やめてくれませんか、私にも、友達が良く云うあだ名があります。」
「これからはイシスと呼んでくれると、嬉しいのですが。」
「イシス様ですか?」
「イシスお姉さまと呼んでいいですか?」
とアリスが聞きます。
小雪さんが「アリス!」と怒りましたが、姉さんは「そう呼んでくれますか?アリスちゃん。」
アリスは単純ですから、イシスお姉さまと連呼しています。
小雪さんが「私も呼んでいいでしょうか?」と恥ずかしそうに聞きます。
「そう呼んでください」
と姉が言いますと、「イシスお姉さま」と嬉しそうにいいました。
「皆さんは、洋人さんの妻なのですから、私は姉になります、そう呼ばれるのが本来でしょう。」
たしかに、このイシス姉さんに比べたら、ダフネさんといえど、小娘というのもおこがましいほどの年の差です。
「洋人さん、いま私の年を考えましたね、許しませんよ。」
と、笑いました。
私も、
「たまには姉妹でお茶でもしましょう、おいしいお菓子も出しますよ。」
アリスさんも小雪さんも察してくれたのか、二人きりにしてくれました。
「姉さん、すこし教えてくれますか?」
「姉さんなら、すぐにもこのエラムへ来れたのに、どうしてこのような手順を踏んだのですか?」
「今から思うとおかしいでしょうが、現実らしくしたかったのです。」
「信じてはくれないかもしれませんが、心配で心配で……」
「洋人さんが云ったように、私も身近に男が欲しかったのです。」
「それなのに洋人はいなくなった、それは寂しかったですよ。」
「今の話しは危ないですね。」
「この際だから宣言しときます。」
「血がつながっていないことですから、私も洋人の争奪戦に参入します。」
戯言と断罪しておきましょう。
「姉さんがイシスだったので、今までの疑問が一気に解消しました。」
「なぜ、あのようなミレニアム問題を解けたのか、なぜ、姉一人の働きで高校を卒業出来たのか、など良く考えると不思議なことが多かったのですが、これで解決です。」
色々よもやま話に花が咲きます。
その後、リリータウンの住人が集まってきました。
イシス姉さん、ここで爆弾を投げました。
「皆さん、一ついっておくことがあります。」
「私は確かに洋人の姉ですが、血はつながっていません。」
「したがって貴女たちの、洋人争奪に私も参戦するつもりです。」
「それから皆さんに、知っておいてもらいたいのですが、私はもう一つ別の名前があります。」
そう云うと、イシス本来の姿を現しました。
有翼の女神、イシスの美貌と迫力を……
「黒の女神、それが本当の私です。」
サリーさん以下、完全に固まっています。
ダフネさんが、
「黒の女神さま……私たちはどうなるのでしょう……」
「大賢者でしたね、ダフネさん、洋人の妻は十五人以内にしましょうと、伝えましたね。」
ちょっとまった、私は聞いていませんよ、だれが勝手に決めたのですか。
「私が決めました。」
「皆さんは洋人の妻、女神が嘘をついてどうしますか。」
「私は洋人のつまみ食いの相手、そのぐらいですが、出来ればお仲間に入れていただきましょう。」
皆の安堵の顔は、どういう意味でしょう。
「皆さんで十一人、力を会わせて、これ以上の妻の増加は、四人以内にさせましょう、私も力を尽くします。」
「それから小雪さんやアリスさんにも言ったのですが、これからは私をイシスと呼んでください。」
サリーさんが、
「女神さま、姉上様、いやイシス様、このエラムへようこそお越しくださりました。」
「しかし、これからどうされますか?」
「私は御座所とこのリリータウン以外は、このエラムに出ないつもりです。」
「洋人は本当に好色です、だから力を会わせて監視いたしましょう。」
「おぉー!」
「妻は十五人以内!」
「おぉー!」
だから戯言はやめてください。
愛人さんたちの気合いの入り方……
だれが私を殺したの?
本当に、だれが私を殺すのでしょうか?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる