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第六十六章 情事日程その三

01 秘密と秘密の計画と

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「ねぇ、アナスタシアさん、たまにはいいですね、時々お嬢様とお忍び視察なんて、皆さんにも体験させてあげませんとね。」
 サリーさんがいいました。

「そうですね、現在、愛人は14名、そのうち姉上様と薫さん、マレーネさんは無理なので11名、二人でお供するとして五日と半日、アンリエッタさんは麗人でも愛人格、彼女を入れれば六日、年に一回ぐらいは息抜きというか親睦を深めるためにもいいかと思いますね。」

「とくにイシュタル様が『ハッスル』されますので、私たちの欲求解消にも多大の効果がありそうです。」
 サリーさんが、
「それはいいとおもいますが、佳人さんたちはいかがしますか、レディスメイドの意見は?」

「やはり同じ待遇はいかがかと、もしそうすると次は夫人、その次は側女となり、それこそ年単位のスケジュールに収まりません。」

「でも何らかのことを、考えてあげる必要がありましょう、女官長は佳人、位階の第三位の身、エラムの女としては昇りつめた地位ではありますし……」

「ハウスキーパーとして、考えを申し上げると、お嬢様はエラムに最初に来られた時、そこに廃墟の教会がありました。」
「そしてガルダ村で盗賊を成敗し、その後ピエールさんたちが管理人をしていた、忘れられる教会に滞在し、エラムを救う決意をなされました。」

「これは当時、お側につき従った私と、お嬢様だけが知ることです。」
「その行程はたしか、廃墟の教会に昼前に到着され、私が午後にお迎えにあがり、途中で夜営、ガルダ村に到着して宿で休憩、盗賊を成敗ののち、あのあたりの森を抜け、湖畔の教会にたどり着き、その教会に長く滞在したはずです。」

「この最初の二泊三日の行程を、お嬢様と一緒に再現するというのはどうでしょう、参加資格は女官長全員、まあ護衛の人間がいりますね。」

「麗しの女騎士団を護衛として、その日はそのあたりを封鎖しなければなりませんが……お嬢様もアナスタシアさんもいかがでしょうか。」

「私は構いませんよ、むしろ息抜きになりますし、夜営の時はあの時のように、ココアでもふるまいましょう。」
「同じ物を食するのも、いいかと思いますね、私としても、気持を新たにするにも有意義です。」

 私の返事に続いてアナスタシアさんも、
「私もいい考えと思います、今のコースはエラムにとって、聖地というべき場所でしょう。」

「黒の巫女の女官長としては、知っておくべきことですし、イシュタル様とご一緒に、その様なことをするのは名誉なことです。」

「私の体験から、イシュタル様と旅をすることは、色々と教えられることに気づきます。」
「それに女官がいない分、女官としての初心に戻れますし、そこでその話に、レディスメイドとして、提案があるのですが。」
「なんでしょう?」

「その二泊三日に、姉上さまと薫さんと、マレーネさんのお三方も、参加していただいてはいかがでしょう。」
「御座所以外、出られないのは、あまりにお可哀そうで、女官長たちだけなら、この際、姉上さまは黒の女神と知らせても、いいのではと思います。」

「佳人になった以上、知ってもいい資格ですし、またブロンズのチョーカーの効力で、少なくとも本人の口からは絶対な漏れないでしょう。」

「薫さんとマレーネさんは、私たちにとって上位の方、そもそも愛人といっても、このお三方は特別な存在なのだと、知っておいてもらう方が、今後のことを考えると、ベストなのではないでしょうか。」

「ちょうど佳人になった直後の今がチャンス、姉上様はエラムは家とおっしゃいましたが、あの意味深な言葉を考えると、家とは帰り来て再び出ていくもの。」
「ならば家を守る、実質的な責任者である、女官長たちに含ませておくことが、良いかと考えます。」
 アナスタシアさん、とてもいい事を提案してくれます。

「薫さんとマレーネさんは、何と説明を?」
 私が聞きますと、
「黒の巫女様を支える、偉大な魔法使いなのは確かなこと、あと黒の女神様と黒の巫女様の関係を、どう説明するかは難しいですが……神話では関係は逆ですから……」

「それは難しくありません、姉、つまり黒の女神は、だれかの意を受けて私を育てたらしく、私はその願いにより仮に黒の巫女を引き受け、エラムにやってきた。」
「どうやら姉上様は、ヴィーナス様を守り育てる立場の方、あとは神々の霧の中……」

「姉がせっかくいってくれたのです、私もこれぐらいはいってあげられます、これは単なる噂、エラムでは噂は花盛りですから。」

 サリーさんが、
「アナスタシアさん、それで行きましょう、ただお三方の話しは、お三方に決めてもらいましょう、多分お断りにはならないでしょう。」

「女官長さんたちは佳人になりました、チョーカーには秘密を守る力があります。あとは私と貴女、ダフネさんとジジさん、それにアンリエッタさんとで詰めればいいだけです。」

 サリーさん、私は蚊帳の外?
 ちょっと酷くありませんか。
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