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第六十六章 情事日程その三

02 説教三昧で飯抜き

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 さてチェックアウトしなくては……
 宿屋を出ようとすると、厳戒態勢になっています。

「ウェヌス女王陛下、お越しになられるのでしたら、お知らせください。」
「今朝何時にお越しか、首席女官長に問い合わせたら、昨日にはカルシュに発たれたとの回答。」
「急遽治安機関を総動員しましたよ、お泊りになるのでしたら、宮殿にお泊りください。本当に肝が縮みました。」

「しかも、ハウスキーパーとレディスメイドまで連れて、何かあったらどうするのですか。」
「お二人も、お止になる立場でしょう。」
 フランクさん、言葉は丁寧ですが目が怒っています。

「ごめんなさい、困らすつもりはなかったのですが、つい我儘で……」
「本当に我儘ですね、アポロ執政やクレマン宰相か嘆くのが分かりましたよ。」
「私も娘がいますが、もしこんなことをすれば、嫁に行くまで部屋に閉じ込めてますよ!」

 宿屋のロビーで、この国の女王は、宰相にガミガミと怒られ続けました。
 どうも宰相という生き物は、お説教が仕事の一部なのでしょうね。

 やっと宰相の説教が終わり、宮殿に連行され、ウェヌスの部屋へ放り込まれると、サリーさんとアナスタシアさんはすごい勢いで帰ります。

「お嬢様、私たちは先程の話しで忙しいのです。」
「お嬢様はヘレンといちゃいちゃしていてください。」
「アンジェリーナ女官長は元先生、きっと良いお話をしてくれましょう、それではごめんなさいね。」

「そんな、一緒にお話しを聞かなくては、この卑怯者。」
「心外なお言葉ですが、奴隷の身としては甘んじて受けさせていただきます。」
「ではアンジェリーナさんによろしく。」
 逃げてしまいました……

「ウェヌス陛下、サリー様とアナスタシア様は?」
「所要がある?逃げましたね、まぁお二人はいいでしょう、主犯がここにいるのですから。」

 学校の先生はお説教が大変お上手です。
 流れるような、そのありがたいお言葉に聞き入る私は、正座している次第です。

「今日はご飯は抜きです!」
 アンジェリーナさんに叱られ続けて、その挙句に飯抜きです。
 本当に私は女王なのでしょうか……

「それからあとでヘレンを寄こします、パンぐらい持ってこさせましょう。」
「お腹が減ったらヘレンでも食べてください、それともデザートに私でも食べますか。」
「考慮しておきます、ヘレンの味次第でしょう。」

「ところで宿屋に泊られたと聞きました。」
「あの宿屋には、帳簿の係にヴィーナス様の教え子の一人がいますが、きずかれましたか?」

「算盤をはじいているのを見ました、喜ばしい限りで、宰相と女官長に散々叱られましたが、収穫はあまりある物と思っています。」
「種は根付きついに芽を出した、エラムの明日の、一つのあり方をこの目で確かに見ました。」

「もっと色々教えられたのですが……多くの子が死にましたね。」
「そうですね。」

「ところで、エリーゼが守り抜いた子供たちは、どうしていますか。」
「いまは半数がこのカルシュの女官、後は先程のように帳簿係になっています。」

「大変好評で、カルシュの女官になった者たちにも、引き合いがあります。」
「ヴィーナス先生は、彼女らの人生にとって、生き抜く武器を与えてくれたのです。」

 うれしい話しです。
 気分が良いですね。
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