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第六十七章 平和な日々の始まり

03 大陸鉄道馬車網計画

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「アポロさん、たしかにいまのエラムは、黒の巫女の独裁体制です。」
「たしかにそれがいいとは、私もおもいません。」

「しかし、その昔もそういって、神聖教の中に賢者会議をつくったのでしょう、結果はどうでしたか。」
「皆、自らの地域の利益ばかりで、機能しなかったのではありませんか。」

「今のままでは、諮問会議にいわれるように、権力を移譲したら、再び同じことがおきませんか?」
「エラムの統治機関が腐敗して、機能不全に陥ったのは、何が原因だったか、分かっているでしょう。」

「こういっては何ですが、たしかに今の諮問会議なら、権力移譲も可能です。」
「なぜなら諮問会議のメンバーは、私がこの目で見込んだ方で、占められているからです。」

「皆さんは優秀です、信任に値する方たちです。」
「しかし私の手が及ばないと、リヒャルトのような無謀な者が出てきます。」

「リヒャルトは、君主としては良い君主でした、タリンのために尽力しました。」
「しかしここに問題があります、ひとたびその地域の総意として、代表が選ばれる時、その代表はその地域の利益代表となるのは必然でしょう。」

「結果はどうなりますか、昔のエラムではありませんか、早すぎるのです。」
「使いこなせない夢は、毒にしかなりません。」

「私はアムリアで、議員制を実行しようとしましたが、できませんでした。」
「ご馳走をご馳走と思えない、ご馳走を食べる器ではない、ということです。」

「いまエラムは徐々に成長しています、大陸全土に、鉄道馬車網の構築を、考えるようになりました。」
「進歩したのです、私は大事を取りたいのです。」

「かといって、能力十分の諮問会議の方々にも、全力を発揮してもらわなければ、ならないのは確かです。」
「いまの提案を、頭から否定はいたしません。」

「いまひとつ、エラムの民心の地域優先思想を、やんわりとエラム世界の繁栄を、主目的に切り替えるために、権力をどう使うかを、考えていただけませんか。」

 すごく難しい顔で、アポロさんはかえっていきました。
 三日後、再び諮問会議が開かれ、このよういいました。

「たとえば鉄道馬車網を、大陸全土に広げそれを一元管理すると、かかわるものは地域優先思想が、組織優先思想に変わるのではないか。」

「要はかかわる物が、大きくなっていけば、優先する対象も大きくなる。」
「それを踏まえれば、大陸鉄道馬車網は一元管理が望ましい。」
「大所高所にたって、計画できるのではと考える。」
 と、アポロさんが発言しました。

 ピーターさんが、
「私が思うに、他者が繁栄すると自分も繁栄するシステムを作ればいいと思う。」
「さすれば自己がかかわる物が、繁栄するためには他者の繁栄も必要となり、私が私がの思想は、嫌でもなくなっていくのではと考える。」

「私が繁栄するには貴方も繁栄する、大陸鉄道馬車網は人の交流、物資の交流が盛んになり、利益が複雑に絡み合ってくるはず。」
「巫女様が云われたのはその点で、アポロ執政の云われる通り、その浮沈がエラム全域に影響する。」

「この大陸鉄道馬車網についての、政策立案の主導権を移譲していただいて、民心を『我らがエラム』と思わせるように主導していけばいい。」

「これが成功すれば次は共同の警察、共同の教育などと、徐々に拡大していけば、『エラムは一つ』の考えが芽生えてくるはず。」

 皆さん、頷いています。
 こうして大陸鉄道馬車網の計画を明記した。
 前述の条約は私の名の下、発布されました。
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