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第六十七章 平和な日々の始まり

10 感謝のハーモニカ演奏

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 明日に備えて、皆で衣装選びをしています。
 ローブ・モンタントの登場です。

 明日のお披露目は、私と女官長さんだけなのに、当然のように愛人さんも参加しています。
 相変わらずの騒動を演じていますが、今回はさらにパワーアップです。
 なんせ女官長さんが参戦しています。

 女官長さんも掛け値なしの美女、その上最高年齢が三十歳ですが、その実はおばさまぞろい……
 根性据わってますから……

 分捕り合戦でないのが救いですね。
 でも、皆さん個性がでていますが、意外に似合う方もいますね、ビクトリアさん。

「そんなに見ないでくれ」
 と、妙にはにかむのが可愛いですね。
「いえ、ムラと来ましたので。」
「そうか、では押し倒してくれ。」

 場の空気が、一瞬で危険な物になります。
「今日はその話しは無しです、また今度ね。」

 次の日、教会は黒山の人だかりです。
 私と女官長さんは、ローブ・モンタントを着て、教会の前の特設の演壇に立ちます。

 昨日と同じように、皆さんに感謝をのべました。
 最後に、
「皆さん、今日はこんなにお集まりいただき、ありがとうございます。」
「今日はせめてもの感謝の印に、私の演奏を皆さんへ捧げます。」
 そう言って、ハーモニカを取り出して吹き始めます。

 『見上げてごらん夜の星』を、を演奏し、『デイ・ドリーム・ビリーバー』は確かザ・モンキーズだったと思います。
 滝廉太郎の『花』も演奏しました。

 『スタンドバイミー』はベン・E・キングが唄った名曲中の名曲でしょう。
 いついかなる時も、側にいてほしいと歌うこの曲は、スティーブンキング原作の映画とともに印象に残る曲です。
 もっとも私はジョン・レノンのカバーの方が印象に残っていますが。

 ちょっとしたコンサートになりましたが、皆さん、聴き入ってくれます。
 最後に『この素晴らしき世界』、ボブ・シールはベトナム戦争を嘆き、平和な世界を夢見てこの曲を書いたといいます。
 エラムに贈るにはもってこいの曲です。

 ツァーは終り、黒の巫女さんの、顔見世興行も終わりました。
 収益は大陸馬車鉄道網の整備です。

 多分諮問会議の目論見は大当たりでしょう。
 殿方の顔を見ればわかります。私はかなりシャイですので、恥ずかしかったのですが……

 私は今、アンリエッタさんを治療した、教会の祭壇の前で考えています。
 あの時私は必死でした、だから当時の想いは鮮明に記憶しています。

 『今の私は神がかりかもしれない。
 自身おかしいと思うが構ってられない。
 目の前のこの人を助けるんだ。
 私がこの人を一人助けられたとしても、この世界がどうなるものでもないだろう。
 でも私と出会った縁があります。』

 そのように思って、惑星エラムにかかわりだしたのです。
 『私と出会った縁(えにし)』、の本当の意味は分かりません、知りたくもありません。
 だれかの思惑としても、その様なことができるのなら、それも縁(えにし)なのでしょう。

 昨日、姉がいいました。
 女官長さんたちとの出会いは必然と。

 偶然と必然、

 ふと思います。
 私たちを取り巻く、色々な出来事はすべて必然なのでは……

 いまあるこの時間、いま見えている世界、この一瞬の出会いも必然なのでは……
 必然とは時々の必然、一瞬が連続する、その一瞬を私たちは必然に選択しているのでは……
 運命とは必然であり、その必然は私たちの想いと連動している……

 想いを糧に行動をすれば、想いと行動の何らかの総和により、必然が浮かび上がる。
 定められているのが、運命と呼べども、運命は必然のもの……

 定められた運命は無限に存在し、私たちはこの必然を水先案内に、運命を選択しているのでは……

 なにか堂々巡りのようにも思えますが……
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