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エピローグ エラムは貴女の嫁ぎ先
04 明日はさりげなくやってくる
しおりを挟む聖地巡礼ツァーが終わってから、一年がたちます。
エラムは、望ましい方向へ歩み始めています。
しかし科学技術の進歩は、不思議におこりません。
停滞しているといえるでしょうが、それが悪いこととは思いません。
人は自身の分を知る必要があるように、文明も分を知っても良いでしょう。
ささやかな幸せこそが、望ましい物と思います。
進歩しないなら、それがどうしたのです。
それでも前向きに、取り組んでいますよ。
このエラムには、幸せが芽吹いています。
今日は馬車鉄道路線が、初めて開通します。
シビルとカルシュ間です。
この路線はここから分岐して、一つはホッパリアへ、もう一つはトレディアへ繋がる予定です。
シビル・アルジャ・キリー路線も、順調に工事が進んでおり、キリー付近は金網馬車鉄道になります。
シビルを中心に南はコナへ、コナからはジャイアールとイーゼルを経由してネメシスへ、またシビルからパリスを経て、ハイドリアへ計画されています。
追々パリス連合王国と、ハイドリア連合王国の王都は繋がるはずです。
これらが完成すれば、エラムの人的交流、そして物流が盛んになり、エラムは一つになります。
キリーはレムリアの玄関口、コナはジャバへの玄関口でもあり、この二つの港町からは、海路が大陸沿岸をつないでいます。
水路で最終的にパリスまで繋がります。
このネットワークを、ベネディクトさんたちは有効に使ってくれるでしょう。
このおっさんは、エラムの人にしては、なかなかに頭が柔らかく、チャンスを逃しません。
ヨアヒムさんの家業に、私と共にテコ入れし、それを起爆剤にアムリアをかなり復興させています。
勿論民間企業、かなり利益もあげていますが、私の目が怖いのでしょうね、今のところ無茶はしていません。
リゲルの復興も、夢ではなくなってきました。
ベネディクトさんは、リゲルにでっかい私の王宮を作って見せると豪語しています。
さらにでっかいハレムも、つけてくれるそうです。
いまでも、美女を献上したがる困ったおじさんで、カミラさん献上という、前科もありますので、きっと凄いハレムができるのでしょうね。
ベネディクトさんにも、きつく言っておいたのですが、産業は各地に分散させることにしています。
大都市は王都ぐらいにして、地方の充実を図っています。
都市とはいい物ですが、諸悪の根源ともなりうるもの、収奪機関ともいえるでしょう。
幸いあまり向上心の見られないエラム、ゆったりとして世界が似合うはずです。
農業は優遇することにしています、食糧不足は文明を崩壊させます。
特にエラムには、家畜制度という汚点が、歴史上に存在します。
これだけはどんなことになっても、再び日の目を見せてはなりません、人が人でなくなります。
こんなものがのさばるなら、奴隷制度の方が百万倍もマシです。
事実エラムの奴隷制度は、家畜制度を否定するために生まれた経緯があります。
エラムにとっては必要悪、慎重に管理しています。
そのための組織でもある、特別高等警察は半端ではありません。
この特高には、すごく厳しく軍規を守らせています、この組織の腐敗は、絶対に許容できないのです。
エラムは静かに成長を始めています。
注意深く明日を引き寄せた結果です、最早、後戻りはないと考えます。
そんなある日、姉が百合の会議で……
「そろそろ、新婚旅行をいたしましょう、約束でもありますし。」
愛人さんは歓声を上げ、女官長さんは怪訝な顔をしています。
姉が説明しています、うまいものですね。
とにかく、何となくこの話は通ってしまいました。
黒の巫女さんは、愛人さんたちとのふれあいのため、しばし元の世界に戻ると……
私には何となくわかります、ただの新婚旅行ではないと……
造化三神のお一人、神産巣日神(かみむすひのかみ)の世界である、エラムの試練は終わりました。
次の高御産巣日神(たかみむすひのかみ)の世界、征服や統治の試練が待っているのでしょう、テラで……
アンリエッタさんが、
「ヴィーナス様、お別れではないですね!」
「頻繁に戻るのではなく、頻繁に通うのです、寵妃の皆さんと、エッチをしないとね。」
「私はスケベですから、皆さんを抱きますよ、どんなことをしても。」
「そうですよ、私もその一人ですから。」
そんなやり取りもありましたが、愛人さんたちはルンルンです。
「姉さん、さりげなくいいましたね、波風なしの、その手腕には感心しました。」
「まあね。」
それ以上、いいません。
準備を始めています。
楽しい新婚旅行の……
ただし、妻は今のところ14人ですが……
エラムに明日がきましたが、とうとう私たち自身の、明日もやってきました。
でもお家はエラムです、あくまでも旅行なのです。
明日のための旅行……
応援ありがとうございます!
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