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エピローグ エラムは貴女の嫁ぎ先
05 審判
しおりを挟むいまさらとは思いますが、審判の時が来ました。
私は亡霊の館でかんがえています。
結論は決まっています、サリーさんも、ビクトリアさんも、ダフネさんも、アテナさんも、小雪さんも、アリスさんも、アナスタシアさんも、ジジさんも、ミレーヌさんも、マリーさんも、薫さんも、マレーネさんも、姉さんもわかっているでしょう。
黒の巫女の審判は、継続観察であることを。
どう考えても、この考えしかないのです。
結論はこれしかない、私がエラムを彷徨った時点で、決まったようなものでした。
もし、終わりを選択するなら、転移の時点で選ぶはずです。
まだこの新世界に結論は早すぎる、やっと歩き出した幼子にすぎません。
人が生きる以上、このキンメリアの世界も、古代のレムリアのように滅ぶのでしょうが、しかしその中より、キンメリアが生まれたように、次世代が育つでしょう。
その次世代の芽を摘むことは、許されないでしょう。
私たちは、破滅を望む意思を、取りあえずは抑えました。
主席みたいなものが、また復活するかもしれませんが、それはその時のことです。
私たちは、混沌の中でなければ、生きられません。
裏切られ、助けられ、愛されて、憎まれて、悲しみ、そして喜ぶ。
諦めや執念、二元論の世界に見えますが、その本質は混沌で、この世が動的に躍動する根源でしょう。
どちらかに徹することが、神や悪魔になれる道と思います。
しかしそれは混沌とは相容れず、おのずとそれが許容される場所へ、弾かれ進化も止まるでしょう。
私たちは可能性を信奉する生き物と思います。
とすれば、進化の停滞は私たちの本質を失うことになります。
このエラムがどのように醜くなるか、はたまた楽園になるのかは、私にはわかりませんが、しかしどちらにもなって欲しくない……
この後も、戦争があり、平和があり、人々はその生まれた時代を呪い、または感謝する。
私はそんな世界を選択したつもりです。
私の視線のかなたで、ジャンとアンネローゼが恋を語らっています。
ほほえむように、陽光が二人を照らしています。
アンネローゼは、子供を身ごもっているようです。
無事に生まれれば、その子に明日をたくすことになるでしょう。
自然の営みとともに、世界が育つのでしょう。
生きることはつらいことです、でもほんのささやかな喜びで、人は生きていけます。
私は子供たちに、残酷な未来を託すのかもしれません。
私は単性生殖を選択しなかった。
女性体の選択は、間違っていたはずです。
このエラムでは女性が多く生まれる。
それで女性婚多妻制と異性婚多妻制が併用されるのは、仕方ないことでしょう。
それでも、神産巣日神(かみむすびのかみ)の世界でも許容される範囲で、男の生殖能力と女を守る誇りと矜持は、必要なのだと思います。
私はその神様が、微笑んだのを知覚しました。
それゆえ私はこの世界に責任を感じています。
この責任から逃げはしません。
幾たびもこの世界を守りましょう。
応援ありがとうございます!
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