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エピローグ エラムは貴女の嫁ぎ先

06 惑星エラム、私たちの星と呼ばせてもらいましょう

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 私はハイドリッヒを愛したのかもしれません。
 仕方なく口付けしたのは、理由が欲しかったのでしょう。

 ハイドリッヒ、貴方が死んで、初めて愛しているのを理解しました。
 貴方の手の温もりが、身体に残っています。
 ありがとう……犠牲は大きかったが、残したものはもっと大きい。
 ハイドリッヒ、この私が愛したのですよ、光栄でしょう……

 人工知能であるマレーネさんは、旅立ちの準備をはじめています。
 第二衛星の監視端末も、自分用の移動端末である薫へシフトしたようです。

 しばし私は、私の世界へ戻ってみましょう。
 皆、私とともに旅するといってくれました。

 造化の三神の天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)様も、頷いて下さったように知覚しました。
 しかし高御産巣日神(たかみむすびのかみ)様は、何もおっしゃらなかったように知覚しました。

 私はこの神様が、私に何かをさせたいのだと直感したのです。
 姉も何かを感じたと思います。
 だから、取りあえず里帰りをすることに決めたのでしょう。

 私たちは人外の者といえます。
 サリーさんたち愛人さんは、最早エラムの世界には戻れないかもしれません……
 心より申し訳なく、おもっています。

 でも一緒に旅してくれると、聞いたときの安堵感は本当です。
 私の我儘とは、わかっていても嬉しかった。

 貴女たちのおかげで、私はこの審判を安心して下せました。
 人は思うほど、棄てたものではないんだと教えてくれました。

 その後、世界を旅して、私たちも成長しましょう。
 流れる水は腐らない、私たちにも明日があるのですから。

 惑星エラム、私たちの星と呼ばせてもらいましょう、ともに成長を競いましょう。
 愛しの星、そして私の嫁いだ家よ。

 正しきにあえば、慈悲の乙女
 悪しきにあえば、英断の乙女

 どちらにも出会わなかった優柔不断の乙女……
 そもそも乙女だったのか……

 姉さん、約束を果たしましょう。
 手をつないで、歌をうたって帰りましょう……
 ただし、みんなといっしょに……

 神の御心のままに……
 でも、私も姉も神さまのはしくれでしたね。

 エピローグ FIN
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