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第二章 森彰子の物語 蓬莱転機
提案
しおりを挟む現地職員として採用された者は、最初の一年、この養成校で学ぶことになります。
つまり合格すれば現地職員なのです。
三十五歳以下の独身女性で、義務教育終了が入学の条件です。
女神の代理人に仕える人材を養成することになり、専門教育、実技習得が目的となります。
聖女女学校同様、定員はきわめて少ないようですが、どうやらすごい人気のようです。
聖女女学校とは違い、容姿のほうも問われない上に、学費などは、雑仕女(ぞうしめ)としての給料が支払われるわけですから、そこから天引きとなりますので、必要ない上に、就職は決まっているわけですからね。
蓬莱阿礼少女(ほうらいあれおとめ)の給料は、衣食住が完全に支給される関係上安く、雑仕女(ぞうしめ)が年に金貨一枚百五十万、中雑仕女(なかのぞうしめ)は金貨一枚半二百二十五万、上雑仕女(うえのぞうしめ)は金貨二枚三百万となります。
チタンのリングが支給され、それなりの魔力が持ち主を守ることになります。
しかし絶大な人気の秘密は、森彰子が提案した特典にあります。
「雑仕女(ぞうしめ)たちに支給される、チタンのリングには持ち主を守る防御機能があると聞きます」
「これで病気などからは守られると考えますが、体の悪い方々にも任官できるように、たとえば電子的な補助装具などを、支給するわけには行かないでしょうか?」
人には言えない苦労をしてきた森彰子、社会的な弱者に対して、配慮が出来るのです。
この一言が評価され、森彰子は四つの大司教区雑仕(ざっし)養成校の担当を兼務する羽目になりました。
つまりは現地職員の採用担当です。
補助装具は蓬莱ステーションでつくられることになり、森彰子が、一人一人にマッチする補助装具の請求をすることになります。
突貫工事で整備した、アジア大司教区雑仕(ざっし)養成校は六月の最終週に開学しました。
まだまだ残工事の最中ですが、一期生を迎え入れたのです。
三月卒業ですので、一期生だけは、夏休みは無しのスパルタ授業となっています。
先の二十名以外に、十名を採用しました。
この十名は頭脳明晰なかたがたですが、小児麻痺の方、目の見えない方、さらには先天的に免疫のない方などがおられます。
内部障害の方は、チタンのリングの絶大な力で一週間で治癒または進行が停止、普通に生活できるようになります。
事故で両足切断の方など、身体の欠損などの方には精密な電子装具を支給、支障なく日々の生活を送れるようになりました。
目の見えない方で、眼球をがんなどで摘出された方は精密な義眼、直接に映像信号を脳に送る優れもので、目がみえるようになりました。
大やけどなど、そのほかの方も、チタンのリングの力でなんなく治癒しました。
森彰子は一期生に感想を書かせました、そして生徒の承諾を得て、公開することとしました。
この一期生の状況と手記が公開されて、ものすごい反響があります。
驚異の医療技術が、紹介されることになったからです。
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