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第六章 ヴァランティーヌの物語 修学旅行
修学旅行の日程表
しおりを挟む……きたっっっっ……
クリームヒルトとフランソワーズは、内心このように思ったのです。
その紙は、先生から渡された修学旅行の日程表。
ヴァランちゃんはこの日程表を眺めながら、クリームヒルトとフランソワーズに、修学旅行の話をするのです。
この話、もう一週間は続いているのですから、たまったものではありません。
日程表によれば、一泊二日の京都旅行。
ホテルは市内にあるランドマークタワーの建物内のホテル。
小学校としてはいいほうですね。
朝8時30分に学校からバスに乗り、9時前の新幹線に乗り、10時すぎに京都駅へ。
『京の花街「宮川町」で舞妓さんと和食ランチ』などという観光バスコースを経ててホテルへ。
翌日、一日中自由行動で、班単位で京都をめぐって、午後4時に京都駅で集合、新幹線に乗って、駅前で解散となっています。
なんでも班に一人、先生がつくらしいのです。
そんなわけで修学旅行中は、聖ブリジッタ女子学園山陽校付属女子小学校はお休みになります。
先生が大挙していなくなるからです。
京都をめぐる班は、4人でひとつの班とし10班、先生を含めて合計50名、班ごとに五人乗り中型タクシーを貸し切りで調達するそうですよ。
「ねぇ、清水寺って綺麗なの?」
と、クリームヒルトに聞いてきました。
フランソワーズさんは、そのあたりは疎いので、クリームヒルトに聞いてくるのです。
「私、あまり知らないけど、紅葉の名所ってことよ」
「あのね、京都の紅葉ってね、十一月の下旬よ、まだ早いわ、クリームヒルト姉さま、知らないんだ」
その後、怒涛のような、清水寺の説明が飛んできました。
翌日、クリームヒルトは乙女ちゃんとお京ちゃんに、愚痴をこぼすと、
「それ、まだ良いほうよ、家なんか明子が鯖寿しの話を持ち出したのよ!信じられないわ、鯖寿しよ!」
乙女ちゃんが、「やはり仕出し屋さんの娘ね」と感心していましたが、
「それよ、お姉ちゃんは鯖寿しも知らないの、家は仕出し屋よ、勉強が足りないわ、なんていうのよ!」
乙女ちゃん、
「うらやましいわ、妹がいるなんて、楽しいでしょうね」
「うるさいだけよ、妹なんて!」
「その割にお京ちゃん、この間、京都観光の本を買っていたじゃない?」
「それは……明子が迷子にならないように、迷惑がかからないように……」
「お京ちゃん、やはり妹が可愛いんじゃないの」
お京ちゃん、ここで強引に話題を変えます。
「それにしても初日の『京の花街「宮川町」で舞妓さんと和食ランチ』ってすごいわね」
「とても小学校の旅行のコースとは思えないわ、たしか生徒の望みで決まるはずだけど、誰が言い出したのかしら?」
クリームヒルトが恥ずかしそうに、
「それ、ヴァランちゃんなの……まったく恥ずかしいわ……」
乙女ちゃんが、
「ヴァランちゃん、おませだから、舞妓さんに会いたかったのよ」
確かにヴァランちゃんは、何としても舞妓さんに会いたかったのです。
クリームヒルトが、
「ヴァランちゃんと明子ちゃん、同じ班だったわね、自由行動はどこへ行く気かしら、聞いていない?」
「明子、金閣、銀閣、清水寺って、云っていたけど……」
「えらく欲張っているのね」
でも、どうやらヴァランちゃんと明子ちゃんの主目的は、地主神社(じしゅじんじゃ)のようなのです。
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