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第一章 セレスティア・デヴィッドソンの物語 パープル・ウィドウ

代価の使い方

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「この際、ヨーロッパの問題は置いといて、高等女学校を創設するなら、技芸学校の件は無意味なのでは?」
「いえ、技芸学校は必要なのです」
「ここからは、セレスティアさんの思いと一致すると考えるのです」

「基本的には三級に創設しますが、四級市民地域にも技芸学校を創設し、おいおい自治組織を成立させ、三級に格上げしていく」
「今の三級市民地域の中から、自治政府など成立している地域は二級としていく、このテラが直轄惑星になる時、四級市民地域は、在ってはならないと思いませんか」

「なるほど……北米にも技芸学校……ですね……」
「今のところはおっしゃる通り、まず北米ですが、ゆくゆくは技芸学校をツールとして、惑星テラから四級をなくしていく」

「技芸学校卒業生の中から、特別推薦でもあれば、八年制高女のメイド任官課程の女専課程への編入も考慮される」
「二級や三級からも、ハレムへ女を差し出す手段を与える」

 セレスティアは考えた。
 たしかにこの忍の案なら、この惑星テラも、直轄惑星への道筋が立つ、予定は所詮予定、未定なのだから。
「いいわ、協力いたしましょう、で、私に何をさせたいの?」

「北米の地を管理する土地、技芸学校の候補地を選び、そこに誘致していただきたい」
「それって私がミコ様に?」
 上杉忍は頷いた。

「厄介な役目です事……代価はどうするの、私が払うことになるけど?」
「ミコ様は変態、親子丼などお好きです、セレスティアさんはお綺麗ですね」

 忍の言葉にどきっとしたセレスティア、確かに永く身体は孤閨を守っている……
 幾度、ミコ様を思って……密かに慰めたのか……

「エカテリーナ様は幸せそうですね、ミコ様に抱かれると女はね……アリシアのお母様ならご存知でしょう?」
「私も今ではミコ様に抱かれるなら、なんでもする変態女ですから」
「セレスティアさんはアリシアさんと一緒に、閨など望まれませんか?」

 ここで忍は決定的なことを言った。
「私はセレスティアさんは、代価を支払うと考えています」
「そしてその代価の値打ちは、ご自身の欲望もありますが、アメリカ地域の二級市民地域への昇格、カナダへも寄られたのでしょう?」

「二級昇格の要望を聞いたはず、シェリルに段取りをさせた以上、私の耳に聞こえるように行動した」
「今回上手くやれば実現する、そう思っているのでしょう?」 

「お見通しですね……なら正直に訊きますが、私の欲望を、代価として受け取って頂く見通しは有るのですか?」

「あります、ミコ様は内心はテラの四級を何とかしたいとお考え、しかし方法がない」
「そこに貴女が身を代価として、技芸学校設立を要望すれば、名分ができますよね、『しかたない』なんて言いながら、全てを分かった上で受け取られますよ」

「四級に技芸学校を設立し、三級とするならば、今の三級の待遇も考えなければならない、すると二級もそれなりの待遇改善を考えられる……」

「その時、女専課程に編入できる高女が設立されていたら……刀自が身を代価として差し出すのですから、『しかたない』がナーキッドの幹部会で通るでしょうね」

「ただ百合の会議と、ハウスキーパー対策が私には分かりませんが……」
「三級を二級にするために、高女を設立する事になりますが、今回設立する高女は、メイド任官課程がからみますのでね……」
「私も覚悟があります、何とか説得できると考えています」

「サリー様は……多分大丈夫でしょう、一度訊いたことがあります」
「サリー様は、女たちの酷い境遇に対しては優しい、致し方ないと認められます……なるほど……私の望みも叶いそう……」

 セレスティアははっきりと、愛の季節が来たことを自覚した、そしてその果実は努力次第で手に入る。
 余生など必要ない、私は寵妃となり、ミコ様とともに時を過ごすのよ……
 そうなると、アリシアはライバルね……

 思わず笑いが出たセレスティアでした。

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