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第四章 ローズマリー・ロッシチルドの物語 狩猟

治せる方のお耳に入れば

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「忍さん、どうしましょう……」
「治せなくはないけど……治せる方のお耳に入れば……」
「しかしほってもおけないでしょうし……」

「そうですね、彼女たちには何の責任もない、責任があるのはヨーロッパと傀儡ペルシャ政府の男……この代価は、最低でもその男たちにかかる、分かりました、私からお耳に入れます」

 忍はすぐにハレム責任者だけが持つ、ミコへの直通通話方法、つまりチョーカーによる連絡を取った。
 話はローズマリーの前で行われ、徐々に忍は蒼ざめた顔になっていった。

 通話が終わると、忍はローズマリーに言った。
「エラムの『奉仕の魔女団』と呼ばれる一団を、派遣して下さるそうです」
「どこかにその生存者を収容する施設を、作るようにとのご指示です」
「それと護衛に、ヴァルキュリヤも派遣するとの事です」

「奉仕の魔女団?」
「惑星エラムにおけるミコ様の親衛魔法団、戦闘攻撃魔法を使いますが、今では医療魔法も使えます」
「『奉仕の魔女団』が惑星外に派遣されることなど、かつてないことです、隊長はアグネスさん、貴女も一度はあったことが有るでしょう」

 ローズマリーはニライカナイで会った、小柄で愛くるしい女性の顔を思い浮かべた。
 
「それで……ミコ様は……」
 ローズマリーは聞いてみた。
「極めて静かな事務的な御返事でした……ご立腹は間違いなしですが……背筋が凍るような思いがしました」
「奉仕の魔女団はミコ様の親衛魔法団、ある意味ミリタリーと変わらない、ミコ様に手向かうものは容赦ないはず、それにヴァルキュリヤ、ヨーロッパは救えないかもしれない……」

「とにかくぺルシャ派遣軍には、バクダッドを占領しユーフラテス河畔まで進出してもらいましょう」
 
 そういうと、忍はすぐにインド洋に浮かぶ、ディエゴガルシア島を接収。
 そこに次々と女たちを収容していると、エラムから『奉仕の魔女団』が小笠原ステーションに到着した。

 すぐにUS―3に分乗してもらい、ディエゴガルシア島のラグーンに運んだ。
 渋いモスグリーンの上着に スカートをはき、大きめの同色のベルトを締めて、白いカッターの襟という、『奉仕の魔女団』の制服で、彼女たちはやってきた。

「ヴィーナス様のご命令により、ただいまより医療魔法を行使する為に参りました」
「肉体を再構成する魔法は、第四序列が必要ですが、奉仕の魔女団には、第四序列が発動できる特別パスポートを預かっていますので、手足の再生などの医療魔法は可能です」

 隊長のアグネスは、忍に丁寧に挨拶してくれました。
 どちらも佳人ではありますが、アグネスの方が先任、ただこの小柄な愛くるしいアグネスは、そのような事は関係ないようです。

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