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第六章 ヘディ・ハプスブルグ・ロートリンゲンの物語 地に堕ちた世界

ご褒美といってはなんですが

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 ヨーロッパはマルタ騎士団領とアイルランド共和国が二級市民国家として残り、大陸の大部分はヨーロッパナーキッド領域となった。
 
「今回は、なんかミコ様の手の上で踊らされたような……」
 いつものようにディエゴガルシア島のパープル・ウィドウ・クラブ事務所では、管理官たちが集まっている中で、上杉忍が呟いた。
 
「あっという間に始末がついた……無慈悲な結末……」
 ヘディ・ハプスブルグ・ロートリンゲンの感想であった。

「とにかく後始末よ、ヘディさん、どこに管理官府を置くつもり?」
 しばらく考えていたヘディであったが、
「マルセイユの沖にある、ウリウル諸島はどう」

「余り人もいないし、いたとしても立ち退き料を支払い、マルセイユへ移ってもらえそうだし、港も有るようだし、いいと思うわ」
 忍のこの一言で、ヨーロッパナーキッド領域の管理官府はウリウル諸島におかれた。
 
 ポメーグ島、ラトノー島、イフ島、ティブラン島の四島からなるこの諸島は、そのうちの大きな二つの島が堤防でつながっており、そこが港になっているのである。
 
 ここに技芸学校など、管理官府の必要なものを設置、対岸のマルセイユからヨーロッパ全土に最低限の鉄道を復旧、産科システムなどを主要な集落に配置した。

 とにかくこの鉄道路線を活用して、緊急に必要な食糧輸送、そして送電線も走らせ、電力網の復旧を図った。
 これが効いたのか、ヨーロッパは徐々に落ち着いて、農地から離れられない生活ではあるが、女たちも何とか平穏な生活、とにかく食べていける生活がやってきた。

「システムが出来上がっているから、意外にスムーズに事が運んでいるわね」
「これで技芸学校から卒業生がでれば、なんとか細かい行政もできるでしょう」

 のんびりとヘディと忍が語らっている。
「ここはいいですね、地中海の日差しは明るいわ」

 ふと、思い出したように忍が、
「ヨーロッパ再生の目途がついたようね、ヘディ・ハプスブルグ・ロートリンゲン管理官、側女の内示がでていますよ、それと管理官全員、ニライカナイに呼ばれています、覚悟していてね」

「覚悟?」
「かなりミコ様に踊らせられたとはいえ、アイルランドの件、懲罰が有るかも知れませんから」
「毒薬料理とお漏らしですか?」

「あれはきついですからね」
「仕方ないですね、管理官になると、一度はしなければならないみたいですね」

 で、管理官全員で二ライカナイに出頭、しかし『百合の会議』は開かれることはなく、反対にミコから食事に招待された。

「ヘディさん、御苦労さまでした、皆さんも良くやっていただけました、感謝していますよ、ところで」
 やはり来た!全員こう思った。

「毒薬料理とお漏らしは免除してあげます、サリーさんから叱られましたからね」
「今回は皆さんに、マリオネットになっていただきましたので、処罰なら私が受けなければなりません」
「私も毒薬料理を食べたことが有りますので、まぁあれは勘弁していただきたいですね」

 ……複雑な沈黙が流れた……

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