ど天然田舎令嬢は都会で運命の恋がしたい!

上木 柚

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第一章

11 王宮舞踏会にて4

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 大いに料理を堪能したロザリンドはウォーレンと別れて、休憩がてらテラスへとやってきた。舞踏会の会場からは音楽、貴婦人の笑い声、令嬢たちのお喋り、ざわめきを遠くに感じながら一息つく。

「やっぱり都会は華やかねぇ…お料理も美味しかったし、ダンスも疲れたけど、まあ楽しかった」

 ウォーレンとのダンスを思い出す。途中、試す様に難しいステップを織り交ぜてきたが、それが逆に楽しかった。3回程足を踏んでしまったけど、気にしない。ちょっぴり涙目になってたけど、たぶん気のせい。
 ロザリンドはぼんやりと月明かりに照らされた王宮の庭を眺めながらベンチに腰掛ける。
 しばらくボーっとベンチに座っていると、近づいてくる足音がした。

「こんな所でなにしてるんだい?」
「トムお兄様!」

 声がした方へ振り向くと、トマスがやってきた。手にはグラスを二つ持っている。

「はいどうぞ。隣に座ってもいいかな?」

「どうぞ」とロザリンドが微笑むと、トマスはグラスを一つ手渡すと、一人分空けてロザリンドの隣に座る。

「たくさん踊ったから疲れちゃって。お腹もいっぱいになったし」
「それにしても、ダンスでは大人気だったね」

『大人気』といわれてロザリンドは苦笑した。正直、最初のブラッドリーとのファーストダンスと最後のウォーレンとのダンス以外はビュッフェの事で頭がいっぱいで心ここにあらずであった。

「お腹がすいて仕方なかったわ」
「ハハッ、食いしん坊は相変わらずのようだね。デザートでも食べに行く?」
「ううん。ルーシーがコルセットをギチギチに締めるんだもの。もうキツくて堪らないわ」

 魅力的なデザートの誘いだったがロザリンドは泣く泣く断った。しょんぼりとお腹を擦りながら。
 そんなロザリンドの様子にトマスはお腹を抱えて笑った。

「じゃあ、腹ごなしに一曲いかがですか?ロザリンド嬢」

 トマスはスッと立ち上がると恭しくロザリンドに手を差し出した。

「本当はダンスホールで誘いたかったんだけど、タイミングが合わなくて」
「ここで踊るの?」
「ダメ?」

 眉毛を下げて困った様に笑うトマス。昔から変わらぬ表情にロザリンドは微笑みを返し、トマスの手を取った。

「ふふふ、喜んで!」

 月明かりに照らされたテラスで、ロザリンドとトマスは踊り始める。舞踏会の会場から漏れてくる管弦楽の演奏に合わせてステップを踏む。先程のウォーレンとのダンスも楽しかったが、トマスとのダンスは終始感じる細やかな気配りとリードでとても踊りやすい。
 曲が終わるとロザリンドはトマスから離れ、ドレスの裾を摘んで挨拶をした。

 ――――パチパチパチ!

 突如聞こえた拍手に二人は弾かれた様にそちらを向いた。

「まるで物語のワンシーンみたいね!とっても素敵だわ!」

 そこにはふんわりとした黒髪を緩く編み込み、可憐な花々で飾り、デビュタントの印である白いドレスに身を包んだ少女が目を輝かせながら二人を見ていた。
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