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第一章
25 思わぬ提案
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「それで、こないだトマス様と、国立図書館に行ってね!薬草の棚の梯子に登ってね!ねえ、聞いてる?」
「図書館には本を読みに行くべきじゃないか?」
「あら、今更つまらない事言うのね、ウィン。そんな杓子定規な頭では、人生の大半を楽しめないんでしょうね。ざんねん」
ロザリンドは、ラッシュブルック公爵邸にて、アリソンとウォーレンの3人でお茶会をしていた。
「ねえ、アリーは王太子殿下と、どんなデートをするの?」
ランランと目を輝かせ、ワクワクとした表情で問いかけるロザリンドに、アリソンは思わず微笑んだ。
「そうねぇ、相手が王太子だと、なかなか普通のデートは楽しめないわね。会うのは王宮がほとんどよ。二人でお茶をしたり、庭園を散歩したり」
「そっか、城下に降りてってなかなか難しいのね。でも王宮って広いし、庭園もいくつもあるし、下手に城下を歩くよりも、よっぽどデートっぽい感じがするわ!お茶をしながら、ふたりの愛を語らうわけね!」
「ふふふ、そうかしらね」
「いや、こいつらは絶対にそんな甘ったるい雰囲気じゃないと思うぞ。どうせお茶を飲みながら『もしこのお茶に毒が混入されていた場合、考えられる容疑者は誰か?』とか、庭園を歩きながら、関わらない方が絶対にいい話とかをして…痛っ!」
「ふふ、余計な事を言うボンクラ公爵令息は誰かしらね」
アリソンは微笑みながらウォーレンの手の甲をつねり上げた。
「関わらない方が絶対にいい話…、つまり秘密の話、ふたりだけの秘密…、それはやっぱり、愛なのね」
「いやいや、絶対にそんなニュアンスで話してないよね?俺、もっと黒い感じを醸し出したよね?」
「ローザには、ずっとそのままでいてほしいわ」
またもや頓珍漢な事を言い出したロザリンドに、ウォーレンは呆れ半分にツッコみ、アリソンはロザリンドの頬を撫で回した。
「ウォーレン様にはまだ婚約者はいないの?」
「俺の場合はいろいろ難しいんだよ。国王の甥で王太子の従弟にして次期王太子妃の従兄、それから公爵家の嫡男、ついでに見てくれも悪い方ではないし、引く手数多なんだが、立場的に誰でもいい訳じゃなくてね…って質問しておきながら聞いてないというのは、やめてもらえないかい?」
ウォーレンに質問したものの、回答が長すぎて飽きたため、別のことをしだしたロザリンド。もはや予定調和のやり取りに、アリソンはお腹を抱えて笑い出した。
「ごめんなさい。なんか思ったより話が長かったから」
「全く、君はいつもそうだな。そういう君こそ婚約話はどうなってるんだ?」
「そうそう、あれから二月経ってるけどどうなってるの?」
実はロザリンドとトマスはまだ婚約に至っていない。ファインズ侯爵家から婚約の打診をとトマスが申し出たのだが、いきなり打診が行くと父が驚いて王都まで早馬で駆け抜けてきかねない為、事前に報告をしたいとロザリンドが固辞した。手紙で知らせてもいいのだが、それも同じ結果を招きそうなので、冬の休暇で領地に戻った時に報告し、それから打診してもらう事になったのだ。
「お父様は心配症だから、きっと驚くと思うのよ。ファインズ侯爵とは旧知の仲だけど、トマス様には十年近く会っていないしね」
「まあ、冬の休暇ならもうすぐだしな」
「アリーとウォーレン様は領地に帰るの?」
「そうね、その予定よ」
「もし良ければ、休暇中にアランドルベルムに遊びに来ない?ラッシュブルック公爵家の領地からアランドルベルムまで、確か馬車で半日くらいなのよね?」
ロザリンドからの思わぬ提案に、アリソンは目を輝かせた。
「図書館には本を読みに行くべきじゃないか?」
「あら、今更つまらない事言うのね、ウィン。そんな杓子定規な頭では、人生の大半を楽しめないんでしょうね。ざんねん」
ロザリンドは、ラッシュブルック公爵邸にて、アリソンとウォーレンの3人でお茶会をしていた。
「ねえ、アリーは王太子殿下と、どんなデートをするの?」
ランランと目を輝かせ、ワクワクとした表情で問いかけるロザリンドに、アリソンは思わず微笑んだ。
「そうねぇ、相手が王太子だと、なかなか普通のデートは楽しめないわね。会うのは王宮がほとんどよ。二人でお茶をしたり、庭園を散歩したり」
「そっか、城下に降りてってなかなか難しいのね。でも王宮って広いし、庭園もいくつもあるし、下手に城下を歩くよりも、よっぽどデートっぽい感じがするわ!お茶をしながら、ふたりの愛を語らうわけね!」
「ふふふ、そうかしらね」
「いや、こいつらは絶対にそんな甘ったるい雰囲気じゃないと思うぞ。どうせお茶を飲みながら『もしこのお茶に毒が混入されていた場合、考えられる容疑者は誰か?』とか、庭園を歩きながら、関わらない方が絶対にいい話とかをして…痛っ!」
「ふふ、余計な事を言うボンクラ公爵令息は誰かしらね」
アリソンは微笑みながらウォーレンの手の甲をつねり上げた。
「関わらない方が絶対にいい話…、つまり秘密の話、ふたりだけの秘密…、それはやっぱり、愛なのね」
「いやいや、絶対にそんなニュアンスで話してないよね?俺、もっと黒い感じを醸し出したよね?」
「ローザには、ずっとそのままでいてほしいわ」
またもや頓珍漢な事を言い出したロザリンドに、ウォーレンは呆れ半分にツッコみ、アリソンはロザリンドの頬を撫で回した。
「ウォーレン様にはまだ婚約者はいないの?」
「俺の場合はいろいろ難しいんだよ。国王の甥で王太子の従弟にして次期王太子妃の従兄、それから公爵家の嫡男、ついでに見てくれも悪い方ではないし、引く手数多なんだが、立場的に誰でもいい訳じゃなくてね…って質問しておきながら聞いてないというのは、やめてもらえないかい?」
ウォーレンに質問したものの、回答が長すぎて飽きたため、別のことをしだしたロザリンド。もはや予定調和のやり取りに、アリソンはお腹を抱えて笑い出した。
「ごめんなさい。なんか思ったより話が長かったから」
「全く、君はいつもそうだな。そういう君こそ婚約話はどうなってるんだ?」
「そうそう、あれから二月経ってるけどどうなってるの?」
実はロザリンドとトマスはまだ婚約に至っていない。ファインズ侯爵家から婚約の打診をとトマスが申し出たのだが、いきなり打診が行くと父が驚いて王都まで早馬で駆け抜けてきかねない為、事前に報告をしたいとロザリンドが固辞した。手紙で知らせてもいいのだが、それも同じ結果を招きそうなので、冬の休暇で領地に戻った時に報告し、それから打診してもらう事になったのだ。
「お父様は心配症だから、きっと驚くと思うのよ。ファインズ侯爵とは旧知の仲だけど、トマス様には十年近く会っていないしね」
「まあ、冬の休暇ならもうすぐだしな」
「アリーとウォーレン様は領地に帰るの?」
「そうね、その予定よ」
「もし良ければ、休暇中にアランドルベルムに遊びに来ない?ラッシュブルック公爵家の領地からアランドルベルムまで、確か馬車で半日くらいなのよね?」
ロザリンドからの思わぬ提案に、アリソンは目を輝かせた。
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