ど天然田舎令嬢は都会で運命の恋がしたい!

上木 柚

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第三章

58 不穏なお茶会

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「…なんか、様子がおかしいわね」

 ずっと籠もりきりという訳にもいかないので、ロザリンドは同年代の参加するお茶会から社交に復帰することにしたのだが、どう言うことか、ロザリンドが近付くと皆シーンとしてしまう。
 直前まで楽しそうに談笑していても、ロザリンドが話に入ろうとするとサッといなくなってしまうのだ。

「みんな突然お腹が痛くなったのかしら?お茶の飲みすぎ?やっぱり、沈んだ気持ちでお茶会に出ているのが伝わってしまうのかしらね…」

「はぁ」とため息をついて、主催者に挨拶をして今日はもう帰ろうと歩き始めたロザリンドだったが、気が付くと数人の令嬢に囲まれていた。

 年の頃は同じくらいと思われる令嬢達は、ロザリンドの頭から足まで見定めるように視線を動かす。

「あの?何か?」

 当の本人であるロザリンドは全く気にした様子もなく、ただ見てくるだけの令嬢達に声をかけた。

「あら、女性にも声をおかけになるのですね」
「え?」

 中心と思われる令嬢が扇で口元を隠しながら、蔑むように言うと、周りの令嬢達は一斉にクスクスと笑い始める。とても嫌な雰囲気に、眉をひそめる参加者もいたが、皆、遠巻きに状況を見ていた。

「今日のお茶会は令嬢だけの集まりですから、さぞかし退屈されたのではありませんこと?」
「プッ、クスクス」

 なぜ令嬢だけだと退屈するのか、ロザリンドには理解出来なかったので、キョトンとしていると、令嬢の一人が馬鹿にしたように、中心にいる令嬢に笑いかける。

「まあ!本当のことを言われて、動揺していらっしゃるの?何にも言い返せませんのね?」
「え?そうじゃなくて、なんでご令嬢だけだと退屈なのかしら?と思って」
「だって、ねぇ?パスカリーノ辺境伯令嬢様は、男性とお話される方が楽しいんじゃないかしらと思って。ねえ?」
「なぜ?わたくしは誰とお話するのも好きですけど?」

 言われている意味がよくわからず、ロザリンドの頭の中は「?」でいっぱいになる。

「ふん、今更取り繕っても貴女の本性は皆わかっていますわよ?そのお人形の様な容姿に違わず、中身も空っぽですのね!皆様、行きましょう」
「クスクス」

 言うだけ言うと令嬢達は去っていった。取り残されたロザリンドは首を傾げ、困惑顔だ。

「皆さんお腹が空いてイライラしてるのかしらね。退席の挨拶の折に、主催者様に伝えとこうかしら…」


 斜め上に解釈したロザリンドは、主催者に「どうやらお腹を空かせたご令嬢達がいるので、軽食を届けて欲しい」と頼み、ロザリンドの帰宅後に軽食を届けられた令嬢達を大いに困惑させた。

 帰宅の馬車の中で、その事をルーシーとルークに話すと、二人は令嬢達の言葉に憤り、その後のロザリンドの対応にため息をついた。
 ロザリンドは「絶対にお腹が空いてたのよ!」と一人おかしな主張をし続けていた。
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