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第一章
どんな色が好き?
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「それにしても魔法陣で眠気覚ましとか面白すぎー!ってあれ?この刺繍糸ってもしかして…、黒龍の髭じゃない!?え?うそ全部!?」
何か発見したのか、ヴァレリアがエレオノーラのローブを食い入るように見る。
「それにこの所々縫い留められてる黒い石は宝石じゃなくて漆黒の魔石じゃない!しかもすっごい純度!エリー、これどうしたの?」
「ああ、それか。実は最近黒龍が渓谷に現れてな。まだ周期じゃないから若い個体だったが、王都に出ていくと厄介だから駆除しておいたんだ。その時大量に手に入ったから、有効活用させてもらった」
【黒龍】とはだいたい200年周期くらいで魔境から最果ての大渓谷に現れる魔獣で、蛇の様に長い身体に魔素を多く含んだ長い髭が特徴で、その体液を煮詰めて魔素を凝縮させ固めたものは漆黒の魔石と呼ばれ、魔力がない者は簡単な魔術を使え、魔力のあるものは消費する魔力を抑える効果がある。髭もまた然り。
なぜ200年周期なのかは分かっていないが、一説には寿命を迎えた個体が死に場所を求めて渓谷に現れるのではないかと言われている。
「黒龍の髭と漆黒の魔石で創られた『眠気覚ましの魔法陣』って!ムダに豪華!」
「あらぁ、でも黒龍が前回出たのは90年くらい前よねぇ?確かにまだ早いわよね。まだ若い個体って言うのも気になるわ」
「ああ、今までは多少ズレたとしても前後10 数年程だったからな。おまけにいつもは老体だ」
「ふーん。なんかちょっと調べてみる必要がありそうね」
ファッション談義からやや話が逸れて、少々ホッとしたミリアムだったが、難しそうな話にポカンとしていると、それに気付いたベアトリーチェがサッと話題を戻す。
「まあ、ミリィもいる事だし、この話はまた調査してからにしましょ。ところで、『無駄に豪華な素材で素朴な効果の魔法陣をあえて組む』と言うのは面白いわねぇ。私も何かやってみようかしらぁ」
「あたしもやりたい!って言うか、エリーのこの刺繍がマジですごいんだけど、どこの工房に頼んだの?」
「それ、私も気になってたのよぅ!ローブを1つ新調しようと思ってたの。ぜひ紹介して欲しいわぁ!ここまでの腕の者は、王宮にもいないものぉ~」
こんな大魔女が二人も三人も押しかけてきては大変だろうと、ミリアムが見知らぬ刺繍工房に思いを馳せていると、エレオノーラがやや照れながらそっとローブを閉じる。
「…私が刺した」
ボソボソっと小声でエレオノーラが呟く。顔はそっぽを向いているので、照れているようだ。
だが、小さく呟かれたその一言に一同は驚愕した。魔法陣として発動する程に緻密に刺されたこの刺繍がまさかのお手製とは!
「嘘でしょ!?エリー刺繍とか出来たの!?」
「あらぁ、初耳ねぇ!全然知らなかったわぁ」
「わたくしも貴族令嬢の嗜みとして刺繍も刺しますが、これはもう職人の領域ですわ!」
見れば見るほど素晴らしい刺繍に一同興奮を隠せない。眠気覚ましの魔法陣のくだりからは傍観に徹していたミリアムも思わず話に参戦してしまった。
「知り合って800年経っても知らないことってあるのねぇ」
「ほんとにー。エリーと針仕事が全く結びつかない!」
「元々はそんなに得意ではなかったのだがな。まあ、800年も刺していれば嫌でも上達するさ」
なるほど800年もその腕を磨き続けている職人などいない。だが、何であっても800年も研鑽し続けられることの方が凄いことだと、ミリアムは尊敬の念を抱いたのだった。
「話がだいぶ逸れちゃったわねぇ。そうそう、ミリィのドレスの裾が裂けてしまってるから直してあげようと思って連れてきたのよぅ」
「ついでにその地味な色味と形も直そうよー」
「名案だな。ふむ、色味はどうしようか。ミリィは何色が好みかな?」
どうやらミリアムのドレスを改造することにしたらしい魔女たちに囲まれ、ミリアムは何だか緊張してくる。
「わたくし、このドレスの様な落ち着いた色味が好きですの…」
(明るい色味なんて、きっと似合わないわ…。だって、わたくしお母様やお姉様みたいに美しくないもの…)
「あー。却下却下。あんたねー、王宮のお茶会なんだからもっと気合い入れなさいよ」
「そうよぉ。若いんだし、透き通るような色白さんだものぉ、明るい色の方が似合うと思うわよぉ?」
「そんなことありません!だって、だって、わたくしは!美しくないですもの…わたくしだけ、美しくないもの…」
目尻から溢れた涙がミリアムの頬を伝う。
俯きギュッとドレスの裾を握りしめる。
何か発見したのか、ヴァレリアがエレオノーラのローブを食い入るように見る。
「それにこの所々縫い留められてる黒い石は宝石じゃなくて漆黒の魔石じゃない!しかもすっごい純度!エリー、これどうしたの?」
「ああ、それか。実は最近黒龍が渓谷に現れてな。まだ周期じゃないから若い個体だったが、王都に出ていくと厄介だから駆除しておいたんだ。その時大量に手に入ったから、有効活用させてもらった」
【黒龍】とはだいたい200年周期くらいで魔境から最果ての大渓谷に現れる魔獣で、蛇の様に長い身体に魔素を多く含んだ長い髭が特徴で、その体液を煮詰めて魔素を凝縮させ固めたものは漆黒の魔石と呼ばれ、魔力がない者は簡単な魔術を使え、魔力のあるものは消費する魔力を抑える効果がある。髭もまた然り。
なぜ200年周期なのかは分かっていないが、一説には寿命を迎えた個体が死に場所を求めて渓谷に現れるのではないかと言われている。
「黒龍の髭と漆黒の魔石で創られた『眠気覚ましの魔法陣』って!ムダに豪華!」
「あらぁ、でも黒龍が前回出たのは90年くらい前よねぇ?確かにまだ早いわよね。まだ若い個体って言うのも気になるわ」
「ああ、今までは多少ズレたとしても前後10 数年程だったからな。おまけにいつもは老体だ」
「ふーん。なんかちょっと調べてみる必要がありそうね」
ファッション談義からやや話が逸れて、少々ホッとしたミリアムだったが、難しそうな話にポカンとしていると、それに気付いたベアトリーチェがサッと話題を戻す。
「まあ、ミリィもいる事だし、この話はまた調査してからにしましょ。ところで、『無駄に豪華な素材で素朴な効果の魔法陣をあえて組む』と言うのは面白いわねぇ。私も何かやってみようかしらぁ」
「あたしもやりたい!って言うか、エリーのこの刺繍がマジですごいんだけど、どこの工房に頼んだの?」
「それ、私も気になってたのよぅ!ローブを1つ新調しようと思ってたの。ぜひ紹介して欲しいわぁ!ここまでの腕の者は、王宮にもいないものぉ~」
こんな大魔女が二人も三人も押しかけてきては大変だろうと、ミリアムが見知らぬ刺繍工房に思いを馳せていると、エレオノーラがやや照れながらそっとローブを閉じる。
「…私が刺した」
ボソボソっと小声でエレオノーラが呟く。顔はそっぽを向いているので、照れているようだ。
だが、小さく呟かれたその一言に一同は驚愕した。魔法陣として発動する程に緻密に刺されたこの刺繍がまさかのお手製とは!
「嘘でしょ!?エリー刺繍とか出来たの!?」
「あらぁ、初耳ねぇ!全然知らなかったわぁ」
「わたくしも貴族令嬢の嗜みとして刺繍も刺しますが、これはもう職人の領域ですわ!」
見れば見るほど素晴らしい刺繍に一同興奮を隠せない。眠気覚ましの魔法陣のくだりからは傍観に徹していたミリアムも思わず話に参戦してしまった。
「知り合って800年経っても知らないことってあるのねぇ」
「ほんとにー。エリーと針仕事が全く結びつかない!」
「元々はそんなに得意ではなかったのだがな。まあ、800年も刺していれば嫌でも上達するさ」
なるほど800年もその腕を磨き続けている職人などいない。だが、何であっても800年も研鑽し続けられることの方が凄いことだと、ミリアムは尊敬の念を抱いたのだった。
「話がだいぶ逸れちゃったわねぇ。そうそう、ミリィのドレスの裾が裂けてしまってるから直してあげようと思って連れてきたのよぅ」
「ついでにその地味な色味と形も直そうよー」
「名案だな。ふむ、色味はどうしようか。ミリィは何色が好みかな?」
どうやらミリアムのドレスを改造することにしたらしい魔女たちに囲まれ、ミリアムは何だか緊張してくる。
「わたくし、このドレスの様な落ち着いた色味が好きですの…」
(明るい色味なんて、きっと似合わないわ…。だって、わたくしお母様やお姉様みたいに美しくないもの…)
「あー。却下却下。あんたねー、王宮のお茶会なんだからもっと気合い入れなさいよ」
「そうよぉ。若いんだし、透き通るような色白さんだものぉ、明るい色の方が似合うと思うわよぉ?」
「そんなことありません!だって、だって、わたくしは!美しくないですもの…わたくしだけ、美しくないもの…」
目尻から溢れた涙がミリアムの頬を伝う。
俯きギュッとドレスの裾を握りしめる。
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