【本編完結】おかわりはいかが?〜偉大なる魔女たちの優雅なお茶会〜

上木 柚

文字の大きさ
9 / 86
第一章

持っているもの

しおりを挟む
「あらあら、どうしたのミリィ?ミリィはとっても美しいわよ?まあ、美しいと言うよりは、可愛らしいかしら」

 ベアトリーチェの言葉にミリアムは首を横に振る。

「ありがとうございます。ですが、分かっているのです。わたくしには兄や姉の様に輝く金の髪も紫水晶の瞳もありません。癖のある平凡な茶色の髪に茶色の瞳です。背だって低いままですし、身体つきもちっとも女性らしくなりません」
「ああー、確かに凹凸に乏しい感じよねー」

 嘆くミリアムにヴァレリアが残念なものを見る目を向ける。

「んもう!リアったら茶々を入れないの!ミリィはご兄姉と自分を比べてしまって落ち込んでいるのかしら?」
「違うのです」

 ミリアムは再度首を横に振った。
 涙が溢れてくるのを必死に堪えようとする彼女の背中をベアトリーチェが優しく撫でる。

「家族はわたくしをとても大切にしてくれています。姉は…厳しいですけれど、両親からも兄からもとても愛されていると、わたくしは知っています」
「ええ、そうなのね」
「だからこそ、自分が情けないのですわ。お茶会に行っても夜会に出ても、いつでもわたくしはカパローニ家の人間として認識されないのです。確かにそこにいるのに、誰もわたくしをミリアム・ファリナ・カパローニだと認めてくれないのです。きっとわたくしがちっとも美しくないからだわ!」
「あらぁ、随分拗らせちゃってるのねぇ」

 ついには両手で顔を覆い泣き出してしまったミリアムを椅子に座らせて、ベアトリーチェはカップにお茶を注ぐ。

「落ち着いてミリィ。さあ、まずはお茶でも飲みなさいな」

 ミリアムは差し出されたカップを受け取り、ゆっくりと口に含む。
 喉を温かいものが通り過ぎていくと、取り乱した心が幾分落ち着く。
 温かいお茶はまるで淹れたてのようだが、先程から給仕もメイドも侍女もいない。円卓の上のポットは自分がここに来てから一度も交換されていないようにも思うのだが、誰か淹れ直したのだろうか。ふと疑問に思う。

「ねぇミリィ。あなたはさっきお兄様やお姉様の様に輝く金の髪も紫水晶の瞳もないと言ったわね。自分にあるのは癖のある平凡な茶色の髪に茶色の瞳だとも」
「…はい」

 ベアトリーチェはミリアムの手をそっと両手で包むと、華のような笑顔を向ける。

「あなたの胡桃色の髪の毛はフェルとアナ…あなたのご両親の髪の色を混ぜたような色でとっても素敵よ。それに先程も言ったけれど、瞳の色はフェルと同じヘーゼル。アナの様な紫水晶の瞳ではないけれど、兄妹の中で唯一お父様とお揃いじゃないのぉ。それにこの可愛らしい髪の毛の癖は若い頃のアナにそっくりよ!ふふ」

 ベアトリーチェの言葉にミリアムはハッとして、顔を上げる。

「ミリィ。無いものを数えたところで虚しくなるだけだ。なにせ持っていないものだからな。だから、持っているものを数えるんだ。“こんなに違う”ではなく“こんなに同じ”だと思うんだ」
「そーよ!誰が何と言おうとあんたはフェルとアナの娘。カパローニ侯爵家の人間でしょ。湿気たツラしてメソメソしてんじゃないわよ。辛気臭いわね」

「皆様…」

 ミリアムは三人の言葉に、今までずっと胸につかえてきた棘が取れた気がした。

(わたくしは、カパローニ侯爵家の人間。誰が何と言おうともお父様とお母様の娘だわ)

「それにね、こう言ったら何なんだけど、ミリィは世間の感覚ではそこそこ美少女だと思うわよぉ。でもなんて言うか、ふふ、比べる相手が悪すぎると言うか…ねぇ。うふふふ」
「あんたの不幸なところは産まれた時からあの美貌の家族に囲まれているところね!あんなのと日々比べてたら卑屈にもなるし、美的感覚も狂うって話よ。ほんとおバカねー」
「そこを捻くれずに、ちょっと拗らせたくらいで済んでいるところにご家族からの愛を感じるな。ははは」

 ちょっと見直そうかと思っていたのに台無しだなとミリアムは半目になった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

処理中です...