【本編完結】おかわりはいかが?〜偉大なる魔女たちの優雅なお茶会〜

上木 柚

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第四章

ミリアム、奮闘する

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 ◇


 部屋に入るとミリアムはロビンを抱えたまま物陰に身を潜めた。
 腕の中で眠ったままのロビンに視線を落とす。
 先程までいた廊下からはバチバチッと言う音や、剣と剣が打ち合う音が聞こえている。
 結構な騒ぎだったのだが、薬で眠らされているのかロビンは全く目を覚ます様子がない。
 万が一の場合には自分がロビンを守らなくてはと思い、何か武器になりそうな物はないかと周囲を見回すが、薄暗くてよくわからない。

 7歳ともなるとなかなかしっかりと体重もある上、寝てしまっていると更にズシリと重みが増す。
 正直、今まで重いものなどあまり持ったりしてこなかったミリアムがずっと抱えているのは無理がある。
 ミリアムはロビンを壁にもたれかける様に座らせると、とにかく灯りを探す。

 幸いにも近くの棚の上にオイルランプを見つけ、火を灯す。

「ひとまず灯りが見つかって良かったですわ。何か武器になる物を探さなくては…」

 キョロキョロと部屋を見て回る。囚われていた部屋に比べると比較的狭いこの部屋は応接室なのだろうか?
 室内には低めで華美な装飾が施されたチェストとソファセット、それから壁には暖炉。
 今は夏なので暖炉には灰1つ落ちていないが、火かき棒や火ばさみ、スコップなどが横に整然と並べられている。

「火かき棒…、これなら武器に使えそうですわね…」

 ミリアムは火かき棒を手に取る。初めて触った鉄製のそれはミリアムには少し重く、振り回すのはなかなか大変そうだが、その分威力はありそうだ。
「よし…!」少し気合を入れ、ギュッと両手で握りしめる。眠るロビンを背に座り込む。

「…エミリオ様。今頃心配なさっているかしら。お帰りになったエミリオ様を笑顔でお迎えするはずでしたのに…」

 今朝ほど見送った愛しい人の笑顔を思い出す。低いけれど安心出来る声、優しく包み込んでくれる大きな手、時折熱く見つめる眼差し…。
 思い出すとキリがない。ミリアムはだんだんと心細くなってきた。この邸で目が覚めてからずっと気を張っていることもあり、不安な気持ちが顔を覗かせている。

「駄目よ。しっかりしなくては」

 フルフルと頭を振り、手に持った火かき棒を再びギュッと握りしめる。

 その時だった。

 ―――――ガタガタガタッ!バンッ!!

 続き部屋のから物音がする。そして、何者かの気配を扉の向こうに感じ、ミリアムの背に恐怖が走る。

(だ、誰かいますわ!どうしましょう!)

 ミリアムの目には恐怖のあまり涙が滲む。足音がこちらの部屋に向かってくるのが分かる。ドアノブに手を掛けたのだろうか、―――ガチャガチャ!っと扉を開ける音がする。

(こちらに来る…!)

 絶体絶命の事態にミリアムは眠るロビンを一瞬振り返ると、オイルランプの灯りを落とし、キュっと唇を噛み締めて扉を睨みつけるように凝視した。

 ―――――キィ…

 扉を開き入ってきた人物が、手に持っていたランプを翳し、こちらを窺ってくる。

「ミリィ!」

 その声に弾かれたようにミリアムは顔を上げた。

「ミリィ!ああ!見つけた!私の天使!」

 入ってきたのはミリアムと同じ胡桃色の髪にヘーゼルの瞳、黒い騎士服に黒いマントを着けた美丈夫。

「お、お父様!!」

 ミリアムはよろめきながらも立ち上がり、父の胸に飛び込んだ。

「お父様!お父様…!助けに来て下さったのですね!ありがとうございます!…怖かった」
「ああミリィ!遅くなってすまなかった。よく頑張ったな。どこも怪我などはしていないか?よく顔を見せてくれ!もう邸の外までエミリオ殿下もレオも来ているからな」

 フェルディナンドはミリアムの無事を確かめると、懐から出した手巾でそっとその涙を拭う。

「お父様!イヴァン殿下をお助けくださいまし!今、この外の廊下で戦っておいでなのです!あの白銀の髪のジルとおっしゃる方もですわ!わたくしとロビンをここに逃してくださいました!」

 ジルとイヴァンの名を聞いたフェルディナンドは、一瞬眉をひそめ、「うーーーん」と複雑な表情をしながら天を仰いだが、溺愛するミリアムからの願いとあって、渋々廊下への扉に向かった。
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