【本編完結】おかわりはいかが?〜偉大なる魔女たちの優雅なお茶会〜

上木 柚

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最終章

魔境の浄化

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 ◇


「魔境の浄化事業?」
「そうだ。悪しき竜の封印以降、大渓谷の向こう側は永らく魔境のままとなっていたが、かつては向こう側にも国は広がり、人々は豊かに暮らしていたんだ」

 800年前、救国の魔女3人によって悪しき竜が再び封印されて以降、生き残った人々と魔女たちは結界を少しずつ広げながら瘴気に侵された土地を浄化してきた。
 大渓谷よりこちら側の土地は、浄化後に瘴気で異常に成長してしまった樹海を切り拓き、人や動物の住める環境を作ってきたのだ。
 しかし、何事にも限界はある。悪しき竜を封印しつつ、広げた結界を保ちながら浄化をするというのは、殊の外魔力を要する。封印と結界の維持だけであればなんの問題もないのだが、この『浄化』という作業が問題だった。広範囲を浄化すると、どうしても封印か結界、どちらかが緩んでしまう。封印が緩むとそこから瘴気が漏れる、結界が緩めば外の瘴気が入ってくる。つまり本末転倒だったのだ。どちらか一つずつなら問題ないのだがと頭を捻ってみてもなかなか良い案は浮かばなかった。そんな事もあり、ある程度人の住める土地が広がった現在の形で、長年現状維持を続けてきたのだった。

「800年の時の流れの中で、人も動物も確実に数が増えてきているんだ。今は問題がなくても、長い目で見ると必ず土地が足りなくなる時代がくる。住む場所にしろ、農耕地にしろ、生きていく為に必要なものだからね。魔境の浄化は人類の課題とも言えるんだ」
「そうなのですね…わたくし、そこまで考えが及んでおりませんでした」
「これから少しずつ学んでいけば大丈夫だよ」

 エミリオは隣に座るミリアムの腰に手を回し、そのまま妖しい手付きで脇腹を擦ろうとし、ミリアムに手の甲を抓られた。

「お話の途中ですわ。エミリオ様。メッですわ」

(くぁぁぁ~~!メッですわって!メッて!はい可愛い!可愛いが限界を突破しましたー!もう悔いはない!ああ…可愛すぎるミリアムに胸が高鳴りすぎて動悸が…ハァハァ)

 両手で顔を覆い天を仰いだり、胸を抑えながらブツブツ何かを呟くエミリオにミリアムは話の続きを促した。

「取り乱してしまった。すまない」
「いいえ、大丈夫ですわ」
「それで、長年現状維持を続けてきたものの、なんとか魔境を浄化出来ないものかとずっと議論されてきたんだ。そして、今回現状を打破できる可能性が出てきた」

 エミリオはちらりとミリアムを見ると、ひと呼吸置いてその名を告げた。

「それがジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネだ」

 ミリアムはつい先日邂逅した白銀の髪の男を思い出す。【真・救国神教】の生き神、姉を誘拐した者、しかし自分を助けてくれた人物。一緒に行動したのは短い時間だったが、悪い人間には見えなかった。などと言ったらエミリオや家族は怒るだろうか…。

「奴の力が実際にわかったのは、私達が“プロドッティ・ダ・フォルノ”で襲撃された時だ」
「エレオノーラ様が負傷された時ですね」
「そうだ。その時エレオノーラ様がご自身の中に流れる聖なる竜と同じ魔力を、ジルベルトの中に認めたんだ。やつは救国の魔女様たちと同等の力を持っていた。つまり、『魔女様たちが今まで通り封印と結界の維持を受け持ち、ジルベルトが魔境を浄化しながら新たに結界を張る』という事が出来る可能性が出てきた」
「なるほど、でも、『魔境を浄化しながら新たな結界を張る』とはかなり危険な任務ですわね」
「そうだ。だから国側からジルベルトにそれを強要することは出来ない。しかし、先日の誘拐事件の事後処理中に、向こうから接触があったんだ」
「接触…でございますか?」

 首を傾げるミリアムにエミリオは頬を緩ませると、その頭をそっと撫でた。

「ああ、をしたいと」
「取り引き…」
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