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最終章
ジルの願い
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――――ミリアム・イヴァン誘拐事件から数日後
サンタンジェロ公爵家別邸での大捕物の混乱に乗じて、ジルは忽然と姿を消した。
エミリオとベアトリーチェら救国の魔女3人はジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネの行方を秘密裏に探っていた。彼が聖なる竜と同じ力を持っているとわかった時から密かに温めていたとある計画の為には、彼の存在は必要不可欠だったことと、彼の力を他国に渡してしまうわけにはいかないからだ。
「ジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネはまだ見つかりませんか?」
「見つからないみたいねぇ。彼に唯一接触した事があるエリーがずっと気配を探ってるけど、うまぁく交わしてるみたいねぇ」
エミリオは本日エレオノーラに招集され、ベアトリーチェの邸のテラスで円卓を囲みながら秘密の会議を行っていた。
というのも、今回の計画をレオナルドに話していないからだ。溺愛する妹の誘拐犯を取り込もうとしている事もあり、エミリオはなかなか切り出せないでいた。
エミリオ自身はこの国の王となる事を決めた時から清濁併せ呑む覚悟は出来ている。しかし、それを他者にまで強要できる程には非情になれない。
「ねー、あんたいつまで金髪小僧に黙っとくつもりよ?」
ヴァレリアはいつもの如く、頬づえをつきながら焼き菓子を口に放り込む。
「んもう、リアったらお行儀が悪いわよぉ。まったく800年言い続けても直らないんだからぁ。でも、そうねぇ。レオちゃんにも早く話した方がいいと私も思うわぁ」
ヴァレリアとベアトリーチェの言葉にエミリオは苦笑しながらティーカップに口をつける。
「あいつを小僧だの、ちゃん付けだので呼べるのは皆様くらいですよ」
お茶を一口飲み、カップをソーサーに戻す。
「レオにはそのうち私から話します。あいつも国王の側近になろうというのですから、当然清濁併せ呑む覚悟は出来ているでしょう。そう言う男です。でも、私はあいつが妹たちをどんなに大切にしているかも知っています。だから、なんとなく言い出しづらくて…」
「ハン。とんだ甘ちゃんね」
「うーん、エミルの優しいところはぁ、良いところでもあるんだけどねぇ」
エミリオが自嘲気味に笑うと、銀色の光と共にエレオノーラが現れる。
「おや、遅刻したかな?」
エレオノーラが円卓につくと、フワリとカップとソーサーが飛んでくる。ベアトリーチェはそこにティーポットからお茶を注いだ。
「今日はどうしたの?白銀野郎の事が何かわかった?」
「それなんだがな、今朝突然私の元にコレが」
エレオノーラはローブから封筒を取り出し、円卓の上に置いた。
「「「手紙?」」」
エミリオが封筒を手に取り、中の手紙を確認する。
――――――――――――――――――――――
親愛なる三人の救国の魔女様及び第一王子殿下
先日はご挨拶もせず立ち去ったことをお許し下さい。
さて、ここ数日皆様におかれましては、熱心に私を探されているご様子。
その理由は私の内に宿るものにあるものと察しております。
そこで、折り入ってお話が御座いますので本日王城のベアトリーチェ様のお邸に参上いたします。
では後ほど
G
追伸
お茶はミントが入ったものを好んでおります。ご参考までに。
――――――――――――――――――――――
「お茶のリクエストまでするとはなかなかの図々しさね」
覗き見していたヴァレリアが呆れた声を出す。
「あらぁ、ミントティー?とっておきのがあるわよぉ。うふふ」
鼻歌を歌いながらミントティーを取りに行ったベアトリーチェに一同(あっ、応えてあげるんだ。リクエスト)と思った時、金色の光と共に白銀の髪に金色の瞳の男、ジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネがテラスの外、ベアトリーチェの薬草の庭園に姿を表した。
「ジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネか?」
胸の前に手を添えてその場に跪き、下を向いたままのジルにエミリオが声をかける。
「お初にお目にかかります。フェリーネ伯爵家が嫡男ジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネと申します。まあ、もう伯爵家はなくなるでしょうが…」
顔を上げて自嘲気味に笑うジルは恭しくお辞儀をすると立ち上がり、テラスに向かって歩いてきた。
「ご一緒しても?」
「構わん」
エミリオの言葉を受け、円卓につく。すると先程のエレオノーラと同じ様にフワリとカップとソーサーが飛んできた。
「はぁい。ご希望のミントティーよぉ」
「おや、ありがとうございます。中央の魔女様にお茶を入れていただくとは、光栄です」
ジルはベアトリーチェが入れたミントティーを一口飲むと「うーん、美味しい」とその金色の瞳を細めた。
「それで?話って何なのよ。白銀野郎」
その人形の様な美しい少女(実際には少女ではないが)から発せられたとは思えない言葉に、ジルは一瞬目を見開くが、すぐに持ち直すと姿勢を正し、エミリオの目をまっすぐ見た。
「私の持つ聖なる竜の力を国に捧げる代わりに、一つ願いを叶えて頂きたいのです」
「【真・救国神教】での罪を帳消しにしてほしい…ということか?」
「あ、それも入れると二つですね」
「二つかよ!?」
「あらぁ、とっても図太い神経の持ち主ねぇ」
「ふはッ、面白いやつだな」
罪を帳消しにした上でさらに願い事があると堂々と言ってのけたジルにヴァレリアが思わずツッコみ、ベアトリーチェは微笑み、エレオノーラは吹き出した。
「まあいい、言ってみろ」
エミリオは何となく頭痛を感じこめかみを押さえながら、その先を促す。
「私に、新しい人生を与えて頂きたい」
金色の瞳はより一層強い眼差しでエミリオを見つめていた。
サンタンジェロ公爵家別邸での大捕物の混乱に乗じて、ジルは忽然と姿を消した。
エミリオとベアトリーチェら救国の魔女3人はジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネの行方を秘密裏に探っていた。彼が聖なる竜と同じ力を持っているとわかった時から密かに温めていたとある計画の為には、彼の存在は必要不可欠だったことと、彼の力を他国に渡してしまうわけにはいかないからだ。
「ジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネはまだ見つかりませんか?」
「見つからないみたいねぇ。彼に唯一接触した事があるエリーがずっと気配を探ってるけど、うまぁく交わしてるみたいねぇ」
エミリオは本日エレオノーラに招集され、ベアトリーチェの邸のテラスで円卓を囲みながら秘密の会議を行っていた。
というのも、今回の計画をレオナルドに話していないからだ。溺愛する妹の誘拐犯を取り込もうとしている事もあり、エミリオはなかなか切り出せないでいた。
エミリオ自身はこの国の王となる事を決めた時から清濁併せ呑む覚悟は出来ている。しかし、それを他者にまで強要できる程には非情になれない。
「ねー、あんたいつまで金髪小僧に黙っとくつもりよ?」
ヴァレリアはいつもの如く、頬づえをつきながら焼き菓子を口に放り込む。
「んもう、リアったらお行儀が悪いわよぉ。まったく800年言い続けても直らないんだからぁ。でも、そうねぇ。レオちゃんにも早く話した方がいいと私も思うわぁ」
ヴァレリアとベアトリーチェの言葉にエミリオは苦笑しながらティーカップに口をつける。
「あいつを小僧だの、ちゃん付けだので呼べるのは皆様くらいですよ」
お茶を一口飲み、カップをソーサーに戻す。
「レオにはそのうち私から話します。あいつも国王の側近になろうというのですから、当然清濁併せ呑む覚悟は出来ているでしょう。そう言う男です。でも、私はあいつが妹たちをどんなに大切にしているかも知っています。だから、なんとなく言い出しづらくて…」
「ハン。とんだ甘ちゃんね」
「うーん、エミルの優しいところはぁ、良いところでもあるんだけどねぇ」
エミリオが自嘲気味に笑うと、銀色の光と共にエレオノーラが現れる。
「おや、遅刻したかな?」
エレオノーラが円卓につくと、フワリとカップとソーサーが飛んでくる。ベアトリーチェはそこにティーポットからお茶を注いだ。
「今日はどうしたの?白銀野郎の事が何かわかった?」
「それなんだがな、今朝突然私の元にコレが」
エレオノーラはローブから封筒を取り出し、円卓の上に置いた。
「「「手紙?」」」
エミリオが封筒を手に取り、中の手紙を確認する。
――――――――――――――――――――――
親愛なる三人の救国の魔女様及び第一王子殿下
先日はご挨拶もせず立ち去ったことをお許し下さい。
さて、ここ数日皆様におかれましては、熱心に私を探されているご様子。
その理由は私の内に宿るものにあるものと察しております。
そこで、折り入ってお話が御座いますので本日王城のベアトリーチェ様のお邸に参上いたします。
では後ほど
G
追伸
お茶はミントが入ったものを好んでおります。ご参考までに。
――――――――――――――――――――――
「お茶のリクエストまでするとはなかなかの図々しさね」
覗き見していたヴァレリアが呆れた声を出す。
「あらぁ、ミントティー?とっておきのがあるわよぉ。うふふ」
鼻歌を歌いながらミントティーを取りに行ったベアトリーチェに一同(あっ、応えてあげるんだ。リクエスト)と思った時、金色の光と共に白銀の髪に金色の瞳の男、ジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネがテラスの外、ベアトリーチェの薬草の庭園に姿を表した。
「ジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネか?」
胸の前に手を添えてその場に跪き、下を向いたままのジルにエミリオが声をかける。
「お初にお目にかかります。フェリーネ伯爵家が嫡男ジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネと申します。まあ、もう伯爵家はなくなるでしょうが…」
顔を上げて自嘲気味に笑うジルは恭しくお辞儀をすると立ち上がり、テラスに向かって歩いてきた。
「ご一緒しても?」
「構わん」
エミリオの言葉を受け、円卓につく。すると先程のエレオノーラと同じ様にフワリとカップとソーサーが飛んできた。
「はぁい。ご希望のミントティーよぉ」
「おや、ありがとうございます。中央の魔女様にお茶を入れていただくとは、光栄です」
ジルはベアトリーチェが入れたミントティーを一口飲むと「うーん、美味しい」とその金色の瞳を細めた。
「それで?話って何なのよ。白銀野郎」
その人形の様な美しい少女(実際には少女ではないが)から発せられたとは思えない言葉に、ジルは一瞬目を見開くが、すぐに持ち直すと姿勢を正し、エミリオの目をまっすぐ見た。
「私の持つ聖なる竜の力を国に捧げる代わりに、一つ願いを叶えて頂きたいのです」
「【真・救国神教】での罪を帳消しにしてほしい…ということか?」
「あ、それも入れると二つですね」
「二つかよ!?」
「あらぁ、とっても図太い神経の持ち主ねぇ」
「ふはッ、面白いやつだな」
罪を帳消しにした上でさらに願い事があると堂々と言ってのけたジルにヴァレリアが思わずツッコみ、ベアトリーチェは微笑み、エレオノーラは吹き出した。
「まあいい、言ってみろ」
エミリオは何となく頭痛を感じこめかみを押さえながら、その先を促す。
「私に、新しい人生を与えて頂きたい」
金色の瞳はより一層強い眼差しでエミリオを見つめていた。
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