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最終章
新しい人生
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◇
「新しい人生…ですか?」
「そうだ。あの男は物心つく前から父親の手によって【真・救国神教】の生き神にされていた。成長して、自分の置かれた立場の異常さに気付いてからは、父親と教団から離れられる機会をずっと探っていたらしい。今回の件は自分の人生を変えるまたとない機会なのだと」
ジルは魔境での浄化作業及び結界構築と引き換えに、ジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネであることを捨て、別の人間として生きていくことを望んだのだ。
新たな名前に新たな仕事、新たな身分。それらを与えてくれたエミリオと3人の救国の魔女に忠誠を誓った。
「ジルベルト・ラウロ・トリスターノ・サルチェ伯爵。奴の新しい名前だ」
「ジルベルトはそのままなのですわね。それに、伯爵位を?」
「ああ、平民だといろいろと制限があってな。呼び出したい時にすぐに会えなかったり、王城内も入れない場所が多くなる。手元に置いておく為には、ある程度身分がある方が仕事をさせやすいんだ。名前は、まあ、よくある名前だと言うこともあるが、母親がつけた名前だから変えるつもりはないそうだ。奴の元に唯一残っていた、母親からの贈り物が“ジルベルト”と言う名前だったと」
「そうなのですね…」
少しの間二人は静かに泉を眺めた。ミリアムは公爵の別邸に閉じ込められていたあの日、助けに来てくれた白銀の髪の男を思い出す。珍しい白銀の髪は新たな人生の足枷になるのではなかろうかとふと思う。
「あの、新しい人生においてあの方の髪の色はあまりにも目立ちすぎるのではないでしょうか?以前の彼を知っている人間は名前を変えたところでわかってしまうかと…」
ミリアムの言葉にエミリオは何故か口を尖らせてむくれてみせる。
「えっと、エミリオ様?いかがなさいましたか?」
「…君が私以外の男の事を考えるのは存外面白くないな」
「え?何を…んん!」
一瞬の隙をついてエミリオはミリアムの唇に自分のそれを重ねた。後頭部を押さえて抱き寄せると、ミリアムの顔中に口づけ、最後にぱくりと耳朶を甘噛みする。
「んもう!エミリオ様~!」
ミリアムが真っ赤に染めた頬を膨らませると、エミリオはその頬を両手で包み込み、チュッと触れるだけの口づけをした。
「ハハハッ!隙ありだな!」
むくれるミリアムを抱き締めて、これ以上ない程幸せを感じる。
「ジルベルトの容姿に関しては問題ない」
「何か対策を?」
「ああ、まずあの目立ちすぎる髪の色が変わるだけでだいぶ印象が変わる。瞳の色はどうにもならないから、日光に弱いということにして普段は少し色の付いた眼鏡をかけさせている」
「なるほど、強すぎる印象のもの、この場合はあの白銀の髪と金色の瞳ですわね。それがなくなるだけで、あまり付き合いのない人間は別人と思いますわね」
「そうなんだ。ちなみに嬉々として魔女様たちが改造に乗り出していた」
その様子を思い浮かべてミリアムは思わず吹き出した。
「ふふ。想像がつきますわね。ヴァレリア様なんて特に張り切ってしまわれそうですわ」
楽しそうに笑うミリアムを見て、エミリオはここの所の疲れが一瞬にして消えていくのを感じた。
以前の様にいつでも会える生活に戻れないものか…と強く思う。
「ミリアム、そろそろ王都に戻ってこないか?寂しいよ」
エミリオの言葉にミリアムは微笑む。
「わたくしも、エミリオ様にお目にかかれなかったここ数日、とても寂しいと思っていました。エミリオ様も同じお気持ちだったのですね」
「ああ。いつでも君に会いたいよ」
「わたくしもですわ。父に王都に戻りたいと伝えてみますわね。もうすっかり、というより最初から体調が悪いなどはなかったのですけどね。父は心配性ですから…」
(心配性と言うか、私への嫌がらせだろうね…うん)
その後、ミリアムの「王都に戻りたい」と言うお願いにフェルディナンドがコロッと折れ、カパローニ一家は王都の邸へと戻った。
そして一月後、エミリオとミリアムの婚約式が執り行われ、カパローニ侯爵家という後ろ盾を得たエミリオは婚約と同時に立太子し、二人は無事に王太子と次期王太子妃となった。
「新しい人生…ですか?」
「そうだ。あの男は物心つく前から父親の手によって【真・救国神教】の生き神にされていた。成長して、自分の置かれた立場の異常さに気付いてからは、父親と教団から離れられる機会をずっと探っていたらしい。今回の件は自分の人生を変えるまたとない機会なのだと」
ジルは魔境での浄化作業及び結界構築と引き換えに、ジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネであることを捨て、別の人間として生きていくことを望んだのだ。
新たな名前に新たな仕事、新たな身分。それらを与えてくれたエミリオと3人の救国の魔女に忠誠を誓った。
「ジルベルト・ラウロ・トリスターノ・サルチェ伯爵。奴の新しい名前だ」
「ジルベルトはそのままなのですわね。それに、伯爵位を?」
「ああ、平民だといろいろと制限があってな。呼び出したい時にすぐに会えなかったり、王城内も入れない場所が多くなる。手元に置いておく為には、ある程度身分がある方が仕事をさせやすいんだ。名前は、まあ、よくある名前だと言うこともあるが、母親がつけた名前だから変えるつもりはないそうだ。奴の元に唯一残っていた、母親からの贈り物が“ジルベルト”と言う名前だったと」
「そうなのですね…」
少しの間二人は静かに泉を眺めた。ミリアムは公爵の別邸に閉じ込められていたあの日、助けに来てくれた白銀の髪の男を思い出す。珍しい白銀の髪は新たな人生の足枷になるのではなかろうかとふと思う。
「あの、新しい人生においてあの方の髪の色はあまりにも目立ちすぎるのではないでしょうか?以前の彼を知っている人間は名前を変えたところでわかってしまうかと…」
ミリアムの言葉にエミリオは何故か口を尖らせてむくれてみせる。
「えっと、エミリオ様?いかがなさいましたか?」
「…君が私以外の男の事を考えるのは存外面白くないな」
「え?何を…んん!」
一瞬の隙をついてエミリオはミリアムの唇に自分のそれを重ねた。後頭部を押さえて抱き寄せると、ミリアムの顔中に口づけ、最後にぱくりと耳朶を甘噛みする。
「んもう!エミリオ様~!」
ミリアムが真っ赤に染めた頬を膨らませると、エミリオはその頬を両手で包み込み、チュッと触れるだけの口づけをした。
「ハハハッ!隙ありだな!」
むくれるミリアムを抱き締めて、これ以上ない程幸せを感じる。
「ジルベルトの容姿に関しては問題ない」
「何か対策を?」
「ああ、まずあの目立ちすぎる髪の色が変わるだけでだいぶ印象が変わる。瞳の色はどうにもならないから、日光に弱いということにして普段は少し色の付いた眼鏡をかけさせている」
「なるほど、強すぎる印象のもの、この場合はあの白銀の髪と金色の瞳ですわね。それがなくなるだけで、あまり付き合いのない人間は別人と思いますわね」
「そうなんだ。ちなみに嬉々として魔女様たちが改造に乗り出していた」
その様子を思い浮かべてミリアムは思わず吹き出した。
「ふふ。想像がつきますわね。ヴァレリア様なんて特に張り切ってしまわれそうですわ」
楽しそうに笑うミリアムを見て、エミリオはここの所の疲れが一瞬にして消えていくのを感じた。
以前の様にいつでも会える生活に戻れないものか…と強く思う。
「ミリアム、そろそろ王都に戻ってこないか?寂しいよ」
エミリオの言葉にミリアムは微笑む。
「わたくしも、エミリオ様にお目にかかれなかったここ数日、とても寂しいと思っていました。エミリオ様も同じお気持ちだったのですね」
「ああ。いつでも君に会いたいよ」
「わたくしもですわ。父に王都に戻りたいと伝えてみますわね。もうすっかり、というより最初から体調が悪いなどはなかったのですけどね。父は心配性ですから…」
(心配性と言うか、私への嫌がらせだろうね…うん)
その後、ミリアムの「王都に戻りたい」と言うお願いにフェルディナンドがコロッと折れ、カパローニ一家は王都の邸へと戻った。
そして一月後、エミリオとミリアムの婚約式が執り行われ、カパローニ侯爵家という後ろ盾を得たエミリオは婚約と同時に立太子し、二人は無事に王太子と次期王太子妃となった。
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