【本編完結】おかわりはいかが?〜偉大なる魔女たちの優雅なお茶会〜

上木 柚

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おかわり

永遠の少女と金の騎士 1

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「僕、大人になったらリアお姉さんをおよめさんにしてあげるね!」

 ロビン(7歳)と樹海の邸で暮らし始めて数カ月。ヴァレリアは自分と同じ境遇のロビンにあれこれと世話を焼いていた。
 最初は樹海の邸の客間を与えていたが、毎晩家族を恋しがって涙を流すロビンを不憫に思い、一週間後には自室に子供用のベッドを置いて、同じ部屋で寝起きするようになった。

「いっちょ前の事言うのは、目の前の皿の人参をきれいに食べてからにしなさい」
「ううーむ」

 幼いロビンが突然転移させられた異世界で、本当の家族の様に接してくれる人間に懐くのは当然のことで、取り分け一緒に暮らしているヴァレリアと、よく遊んでくれるミリアムによく懐いた。


 ロビンの異世界転移の原因となった【真・救国神教】の解体後、異世界転移者であるロビンの身の振り方が議論され、まだ幼い事と今回の転移の経緯を考え、どこかの家の養子として庇護していくという事となった。

 候補となる家はいくつか上がったが、ロビンがミリアムに懐いている事や、樹海の魔女ヴァレリアが成長を見届けていきたいと強く希望した為、カパローニ侯爵家に白羽の矢が立ち、現侯爵フェルディナンドと次期侯爵レオナルドがこれを了承し、ロビンはカパローニ侯爵家へとその居を移した。


 ―――――――


 旅立ちの日、ロビンを王城のレオナルドとエミリオの所まで送り届けたヴァレリアは、自室の子供用のベッドをそっと撫でながら、ボンヤリとしていた。

「なーんか、静かになっちゃったわね…」

 この世界に転移させられてから800年。救国の魔女になってしばらくは王都で暮らしたこともあったが、国が手配したメイドや侍女などの使用人に囲まれた貴族の様な暮らしにはどうしても馴染めなかった。

 元の世界では両親は共働きで、年の離れた幼い弟の面倒を見ながら学業と家事をこなす日々だった。そんな中、自分がこちらに来てしまい、その後家族はどうなったのだろうかとヴァレリアは幾度となく考えていた。
 そもそもこちらの世界とは時間の流れ方が違うかもしれない。こちらで800年経った今でも、向こうは大して時間は経っていないのかもしれない。

 ロビンの記憶を覗いた時に部屋に飾ってあったヒーローの人形には見覚えがあった。ロビンは恐らく自分のいた世界の、そう遠くない時代からやってきたのだろう。

 ヴァレリアはそんな事を考えながら小さな子供用のベッドからシーツやカバーを外し始める。

「どうしてもあの子と重ねちゃうのよね。いつもはこんなに異世界転移者に入れ込まないのに…」

 ロビンの使っていたベッドから、洗う物をあらかた外し終わると洗濯用のバケツを持って庭に出る。
 樹海の邸にいる時、ヴァレリアは生活において魔法をあまり使わない。掃除、洗濯や料理は自分の手で行う。それが自分にとっての自然で、普通の生活だからだ。

「寂しがってないかしら…。まあ、ミリィの所なら、きっと大切に育ててくれるわよね」


 ―――――――


『これおいしいね!リアお姉さん!』

 食卓で久方ぶりの一人の夕餉。向かいの席に座っていたロビンの笑顔がふと頭をよぎり、ヴァレリアは思わず苦笑する。

「まったく、寂しがってるのはどっちだか…」

 一人暮らしが長かった(なにせ800年)為、この数カ月は煩わしいこともあったが、楽しかったのだ。ヴァレリアは久しぶりに感じた「寂しい」という感情を噛み締めた。
 そして、ロビンが無事に成人し、いつか良き出会いに恵まれて巣立っていくまで、姉のような気持ちで見守ろうと心に決めた。

 はずだったのだが…。




 ――――――――10年後



「…何でこうなったの!?」 

 ここ最近の樹海の邸には頻繁に訪ねてくる者がいる。輝く金色の髪に、澄んだ空色の瞳。元騎士団長の義父と義祖父によって鍛え抜かれた肉体、ヴァレリアが見上げる程に身長も伸び、17歳になってすっかり大人びだロビンである。

「今日こそは頷いてもらうよ!リア!俺と婚約して!」
「イヤよ」
「何で!?」
「有り得ないわよ!あたしは今年で827歳!810も年下なんて男として見れないってーの!」
「俺は歳なんて気にしない!リアの刻が止まってても気にしない!」
「そこは気にして!?取り敢えずもう帰んなさい!」

 ヴァレリアは詰め寄ってくるロビンに向かって白銀の杖をクルクルッと振りかざす。
 次の瞬間、瑠璃色の魔法陣にロビンが包まれる。

「あーっ!!ひどい!せっかくここまで来たのに…◯◇☆※★」

 何かを叫んでいたがヴァレリアは容赦なく王都のカパローニ邸へとロビンを飛ばした。

「どこで間違えた!?」
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