私が世界征服を諦めた日。

れい

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私が世界征服を諦めた日。

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ヒエラルキー、って知ってる?

ピラミッド型の段階的階級制度のことを言うんだって。
ふぅん、って思った?自分には関係ないと思った?

私はね、なるほど、って思ったよ。
私に見えていたピラミッドって、これだったんだ、って。

高校生の頃の思い出ってさ、きらきら輝いてて、あの頃に戻りたいなってよく思うんだ。
だけど違うって気付いた。私が戻りたかったのは、あの小さなピラミッドの頂点だったんだ。

高校生のヒエラルキーって案外単純でさ。今思えば、何だけど。
例えばそれは学力だったり、運動神経だったり、性格だったり、容姿だったりして。

別に全部が一番じゃなくてもいいの。

テストはクラスで五番目以内に入れれば良くて。
運動神経は正直私は良くもなければ悪くもないくらいだった。

性格は少し大変だった。常に明るく振舞って、相手が欲しがってる言葉を見極めないといけなかったから。
何だかずっと、笑顔の仮面を被ってるみたいだった。
だけどそれを悟られてしまったら何かが終わってしまう気がしたの。
だから私は、仮面の私が本当の私の笑顔だと、自分も皆も騙し続けた。

でもそれより大変だったことがあった。
たぶんそれは、女子高生という生き物だからこそ、一番大事だったんだと思う。

それは、常に最先端でいること。少なくとも、あの中では。
髪型も、メイクも、スイーツも。
テレビのバラエティもドラマもお笑いも。
言葉遣いも、服装も、SNSも、噂話も、仲良くもないあの子の恋愛事情も、全部。
どれだけ知っているかが、あの小さな階層の位置を決めていた。

くだらない、って思った?
私は今になって、くだらない、って思えるようになったよ。

だってさ、女子高生だった私からしたら、あれが世界の全てだったわけで。
ピラミッドの先端も底辺も見えるくらいの大きさで。

社会に出て、浅はかだったなぁって、思った。

あの小さな四角錐は、もっと大きな何かの、一部屋でしかなかったの。
社会では、生まれとか、学歴とか、年収とか、職業とか、名声とか、高校生の時とは違う指標がたくさんあって。
同じように性格もあるけど、ただのノリの良いいい子ちゃんってだけじゃもちろんダメで。

どうすれば私は、先端まで行けるのかずっと考えてた。
大学の教授になって、立派な論文を提出する?
女優になって、新人女優賞を狙う?
映画監督になって、アカデミー賞にノミネートされる?
小説家になって、芥川賞を獲る?
お笑い芸人になって、M-1グランプリで優勝する?
アイドルになって、グループの総選挙で一位になる?
自分で起業して、上場企業の社長になる?
それとも、政治家を目指して、内閣総理大臣にでもなる?

バカバカしい。やっとそう思えた。
私は想像した遠いあの人たちに、優劣をつけることが出来なかったから。

私には、日本のヒエラルキーの、先端も底辺も見えなかった。

それで初めて気付いたの。
日本のヒエラルキーだって、世界からしたらあの高校生の小部屋と一緒なんじゃないかって。
世界の、いや、地球のヒエラルキーはもっともっと大きくて、先端も底辺も見えるわけがなくて。
それが見えてる人間という生き物は、たぶんどこにもいなくて。
いるとしたら、神様だ。だけど神様の世界にも、きっとそのピラミッドはあって。でも神様もそれは見えていなくて。
私達は所詮、自分のいる小さな小さなピラミッドしか、把握することは出来ない。

だから私は、考えるのを止めた。
優劣をつけることの、なんてくだらないことなんだと。

でもみんな、優劣をつけたがる生き物でしょう?
反論をしたりすることは、面倒臭くて生きにくい世の中でしょう?
だから私は、笑顔の仮面の下で、くだらないな、って鼻で嗤う。

そんな私が一番、頂点に立ちたがっていることも、くだらないな、って今日も嗤うの。
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