愛?愛!愛。

ぴぽ子

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14.土俵に立てていないのは私の方だった

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 私がアルバイトとして働くこのお店はそれなりに大きな規模の雑貨屋である。店員の数はとても多い。きっと私はその3分の1の店員をちゃんとは知っていないだろう。
 でも、その中でもどの店員からも知られている男性店員がいる。
 彼は小佐田さん。整った顔に優しい声。気が利くし、仕事も早い。彼は店員の中でかなり人気で、まるで皆んなのアイドルのような存在だ。

 数ヶ月前からだろうか。彼にストーカーができた。

 確かな年齢はわからないが、きっと学生だろう。小柄で、愛嬌のある笑顔と丁寧な言葉遣いのできる女の子だ。


 彼女は突然現れた。最初はレジの周りを商品を持たずにウロウロする怪しい女の子がいると噂されているくらいだった。
 彼女は小佐田さんに話しかけた。

 「彼女いますか?」と。

 このことがわかってから、私たち店員の中で彼女は小佐田さんに恋するストーカーと認識されるようになった。
 小佐田さんにシフトを変えようかと話しかけたが「困ったことは今のところ特にないので大丈夫ですよ。」と断られた。
 彼女はこの店でよく買い物をするし、怪しい行動は小佐田さんのシフトの日に店にきてレジの周りをウロウロするくらいだったので出禁には繋がらなかった。



 皆んなは小佐田さんのことを“アイドル”や“推し”という言葉で表しているが私は違う。
 彼のことが本気で好きなんだ。

 今のところライバルはいない。いたとしても、あのストーカーくらいだ。あんなストーカーはきっと小佐田さんに相手にもされないから、そもそも土俵すら立っていない。惨めな女の子だ。



 そう思っていたのに。

 私は店の近くで、小佐田さんとストーカーが2人で歩いてるところを目撃した。
 私はその日バイトで小佐田さんにすぐ確認した。


 「今日、あのストーカー女と一緒にいました?」

 「ストーカー女?あー、はい。一緒にいましたね。」

 「もしかして、外で声かけられちゃったとかですか?本当迷惑ですよね。警察に相談します?」

 「あ、いえ、大丈夫ですよ。」

 「なんでですか?!いつ何が起きるかわからないですよね?私は小佐田さんのことが心配で…」

 これで、ストーカーを彼から離せるし、私が心配しているアピールもできる。株上がるかな。

 「水野さん。心配してくれてありがとうございます。でも、本当に大丈夫ですよ。彼女は僕の恋人なので。」


 今なんて言った?私の思考回路が停止する。


 「他の人に初めて言いました。まだ誰にも言ってないんですよね。」

 えへへと照れ笑いをする小佐田さん。

 「実は彼女に連絡先を聞かれて、交換したんですよ。それから連絡をとるようになって、実際に会ったりもしました。それで、つい先日彼女に告白されて付き合うことになったんです。」

 笑顔で話す小佐田さん。もう顔に“幸せ”と書いてある。


 なんてこった。私が余裕をこいている間に、彼女は積極的に小佐田さんにアピールしてたんだ。気持ちを伝えてたんだ。
 まさか、土俵にも立っていないと思っていたストーカーが小佐田さんと付き合うなんて。土俵に立てていないのは私の方だった。
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